『氷点下の朝』

文字数 277文字

手が かじかむほどに寒い日は
白い息が 見えるから
呼吸を感じながら 歩ける

向こうのサラリーマンも
犬を散歩させている人も
白い息を はきながら 歩いている

冬の潔い冷気は
心も透かしてしまうようで
見られぬように コートの前を
私は両手で しっかりと閉じた

見られては困る心を
人はいくつ持って歩いているのだろう
娘のせいにした 先刻の些細な口論
本当は私が悪かった

霜柱 ざくざくと踏みつける
足底の感触を 頭のてっぺんまで伝えながら
先刻の嫌な自分も 踏みつけてしまえ
そして彼女のところへ引き返そう

白い息 確かめて
ざくざく踏みつけて
寒さがキンと 身に沁みる
なんだか素敵な朝だもの










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