『風に』

文字数 479文字




草木がお遊戯でもしているかのように
風に合わせて 同じ角度に傾いている

ひとり肌寒い朝の道を ゆっくり歩く
風がときに強く吹き付ける中を

草木はあらがうことなんてしない
風のリズムに乗り愉しげに踊っている

揺られまいと 黙々と 歩く人 走る人
自分のペースを守るかのように

私もそのひとりだと
ふと立ち止まってみても
結局揺られることなんてできずに
あきらめてまた歩きはじめる


視界が開けたその先に
白いツツジとタンポポ綿毛の群生

真冬の雪を思わせる その白さに めまいを覚え
一瞬、浮遊感を味わうけれど
決して風には乗れない私

タンポポ綿毛は風に舞う
たちのぼる湯気のように ゆらゆらゆらゆら
別の地を見つけるために ゆらゆらゆらゆら

羨ましげに目でおっていると
身体ではなく心の重さを感じた

うまく乗ることができないのは
うまく揺られることができないのは

羨ましいのは風に乗ることじゃない
心を軽くすること

切ないくらいにキレイを映し出す空に
泣きたくなる





言葉を紡ぐための
とびっきりお気に入りのノートを探しにいくのはどうだろう
ふとそんなことを思いつくと
少しばかり気持ちがふくらんで
少しばかり 心 風にうかんだ




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