『日暮れ道』

文字数 302文字

前の信号が 赤へと変わる
ゆっくりと 速度を落とす車列

日暮れ手前の空には
不思議な彩りがうまれていた

淡い翠の海のような
葡萄のなかにいるような

隙間を溶け合うようにのびゆく
薄紫やほのかな桃色の雲

人工で作られた赤が
あまりにも美しく自然の色に溶け込んでいて
しばし見とれ感動を覚える

刻々と変わりゆく彩りの中で青信号を待つ
このわずかな時間

ふと停まって空に想いを馳せる時間に
今日の出来事がひらりと行き過ぎる

雲の流れのように優しく重なり
そしてまた流れていく

次の瞬間には
なに食べようかなどと考えている

人工の青が点灯し ハッとして
わたしは右足をブレーキペダルから離す

不思議な空の その揺らぐ色のなかへ
加速し どんどんと入っていく








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