『水無月最終日の帰路』

文字数 304文字

日暮れを歩く帰路
夏至を過ぎてもまだ
十九時過ぎての日の入り(どき)

昼間の余韻と
忍び込む闇との
谷間に浮かぶ薄群青

涼やかさを十分に含む風が
伸びた髪の隙間をそよいでいく

厚みを増しながら足早に動きまわる
蒼みがかったグレイの雲

梅雨なき北海道
雨の中ではなく
夏の日差しの中で咲く紫陽花は
まだ新緑の中に身を潜めている

そっと近づいてみると
夏空の下を目指し
わずかながらに色を着け
ほんのりと形をつくり始めていた





水無月最終日の帰路
無我夢中に過ぎた一日も
いまひとつだった一日も
過ぎてしまえば思い出の中

やりたいことをしている喜びも
そこにはきちんと刻まれていることを
一番に思い出しながら

紫陽花に置いてきぼりにされぬよう
我が家へ
そして、夏へ向かう


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