『暁闇の手前で』

文字数 350文字

どっぷりと深い夜の闇で
ふと目を覚ました

高く低く 高く低く
部屋に響く秒針の音が
ここぞとばかりに自己主張している

眠らなければと焦るほど
神経と鼓動が同時に昂って
複雑な旋律が脳を駆け巡る

時間ばかりがむやみに過ぎ
次々と脳裏に浮かび上がっては
すぐに消えていく映像

ブランコを漕いでいる幼い私
何度もノートに書き込んだ二次関数の放物線
見上げていた流れていく一瞬の星

暁の気配が漂い始める
眠ろうとする焦りの中で
私の脳はどうしてしまったのか

眠ることを諦め
今 見たものをゆっくりと振り返る
確かにあれは私の大切な瞬間の断片

忘れかけていたけれど
今の私に必要な記憶ではないだろうか
あの時のあの想いは

そう気付いたとき
心は高く ふわりと暁天を舞い
朝日の中へと着地していた

何事もなかったかのようでも
確かに私の脳裏に刻まれて
また1日が始まる







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