『傘を忘れて』
文字数 351文字
夕方からの雨予報
知っていながら まんまと傘を忘れた日
駅の出口でしばし立ち尽くす
通り過ぎる人が
水溜りに気付かずに走り過ぎていった
その水しぶきが私にかかる
驚いて視線をその人に向けてみたけれど
振り返ることも 下を気にすることもなく
彼は駆けて行った
目の前を
傘を差さずに歩いていくスーツの女性
前髪を伝い落ちる雨をはらいのけ
目を凝らして前を見て
ぼんやり立っている自分が
阿呆のように感じられ
仕方なく私も
雨の中へ 一歩 足を進めてみる
途端に たくさんの雨粒が 容赦なく
私を洗い流すように落ちてきた
冷たい雨
こんなに雨に打たれながら歩くのは久しぶり
じんわり体を冷やしていく
家までの距離が遠く感じる
冷たい
そう思ったとき
細く開けられた校舎の窓から
雨音の隙間を通って
ホルンの音が優しく響いてきた
ほんのり
体温が上がった気がした
知っていながら まんまと傘を忘れた日
駅の出口でしばし立ち尽くす
通り過ぎる人が
水溜りに気付かずに走り過ぎていった
その水しぶきが私にかかる
驚いて視線をその人に向けてみたけれど
振り返ることも 下を気にすることもなく
彼は駆けて行った
目の前を
傘を差さずに歩いていくスーツの女性
前髪を伝い落ちる雨をはらいのけ
目を凝らして前を見て
ぼんやり立っている自分が
阿呆のように感じられ
仕方なく私も
雨の中へ 一歩 足を進めてみる
途端に たくさんの雨粒が 容赦なく
私を洗い流すように落ちてきた
冷たい雨
こんなに雨に打たれながら歩くのは久しぶり
じんわり体を冷やしていく
家までの距離が遠く感じる
冷たい
そう思ったとき
細く開けられた校舎の窓から
雨音の隙間を通って
ホルンの音が優しく響いてきた
ほんのり
体温が上がった気がした