第31話 エンディング
文字数 1,605文字
次のシーンは寝室で撮った。僕も早川さんもいきなり全裸だった。そしてベッドの上で、キッチンでの撮影以上に激しく淫らな絡みが続いた。
早川さんは僕の上になったり、横になったり、挙句には動物の交尾のように四つん這いになったり、彼女のどこにこんな淫乱な血が流れているのか考えてしまうほど乱れた姿を見せていた。
僕はと言うと、ただひたすら彼女を責めることに集中していた。過去の清楚な早川さんの姿は僕の中から完全に消えていた。今はただ雌を求める好色な雄でしかなかった。
全てが終わった時、僕はかなりの疲労感を感じていた。それは肉体的な疲れよりも精神的な疲れの方が大きかった。
長年恋焦がれた早川さん。僕の中では女神になっていた早川さん。そんな彼女を僕はこれ以上ないほど荒々しく、そして淫らに扱ってしまったのである。
さらに言えば、お互いの気持ちを確かめることも無く、ただ仕事だからという安直な理由から彼女を抱いてしまったのである。言わば愛の無いセックスをしたようなものだ。僕の中に再び罪の意識が芽生えて来ていた。
僕の隣に目をやれば、早川さんもさすがにぐったりしていて、祥子さんから渡されたペットボトルの中身をやっとの思いで飲んでいる。早川さんも罪の意識はあるのだろうか。いや、そんな気持ちなどにはなっていないだろう。
こんな状況に僕を巻き込んだのは早川さんだし、祥子さんが言うような『したたかさ』があるのなら、これくらいは大したことはないはずなのだ。
早川さんはまたガウンを羽織ると、僕より先にバスルームに向かった。寝室に残された僕に祥子さんが言った。
「お疲れ。何とかなったじゃない」
「はい。でも、これで良かったのでしょうか」
「何が?」
「こんな形で飛鳥さんとセックスしてしまって」
祥子さんは僕の肩をポンと叩いて言った。
「何言ってんの。あの子が自分から言い出したんだから、気にすることはないわよ。それに飛鳥とやれたんだから、あんたは幸せモンかもね」
祥子さんはそう言うと撤収の準備に部屋を出て行った。僕は乱れているベッドシーツを眺めながら思った。
これで良かったのだろうか。僕の中で収まりかけていた怒りの炎がまた少しずつ大きくなると同時に、小さな正義感も頭をもたげるのだった。
僕と早川さんは撮影も終わりスタッフも引き上げると言うので、彼等と一緒にマンションを出た。監督は一つ大きく背伸びをすると、もう一人の男とジャンパーの男に言った。
「お疲れ。どうだ、少し早いけど飲み行くか?」
もう一人の男は、それが恒例であるかのように荷物の積みこみの作業をしながら答えた。
「いいですよ。いつもの店ですね」
「ああ、先に行っているから」
「分かりました」
監督はそれだけ言うと、タクシーを捕まえる為に表通りに向かって歩いて言った。残された男がジャンパーの若い男に訊いた。
「お前はどうする?」
ジャンパーの男は申し訳なさそうに頭を掻いていた。
「すいません。今日はちょっと……」
「そうか。なら、俺だけで行くから、車を事務所に戻して道具も片付けておいてくれるか」
「いいっスよ」
その男も監督と同じように表通りに向かって行った。残されたジャンパーの男は残りの資材を車に積みこんだ後、祥子さんに尋ねていた。
「祥子さんはどうします?」
祥子さんは何事かを考えていたようだったが、やがて気を取り直して言った。
「私も今日は止めておくわ。ちょっと行きたい所もあるし、あんたは車と道具をよろしく」
「分かりました。じゃあ」
その男はそう言うと車を走らせるのだった。それを見送った祥子さんが僕達の方に向かって言った。
「飛鳥、今日はお疲れ。そこのあんたも今日は色々あって大変だったと思うけど、まぁ、いい経験が出来たぐらいに思っていればいいわ。じゃあ、またね」
祥子さんはそう言うと颯爽と歩いて言った、早川さんはその後姿に「お疲れ!」叫びながら手を振るのだった。
早川さんは僕の上になったり、横になったり、挙句には動物の交尾のように四つん這いになったり、彼女のどこにこんな淫乱な血が流れているのか考えてしまうほど乱れた姿を見せていた。
僕はと言うと、ただひたすら彼女を責めることに集中していた。過去の清楚な早川さんの姿は僕の中から完全に消えていた。今はただ雌を求める好色な雄でしかなかった。
全てが終わった時、僕はかなりの疲労感を感じていた。それは肉体的な疲れよりも精神的な疲れの方が大きかった。
長年恋焦がれた早川さん。僕の中では女神になっていた早川さん。そんな彼女を僕はこれ以上ないほど荒々しく、そして淫らに扱ってしまったのである。
さらに言えば、お互いの気持ちを確かめることも無く、ただ仕事だからという安直な理由から彼女を抱いてしまったのである。言わば愛の無いセックスをしたようなものだ。僕の中に再び罪の意識が芽生えて来ていた。
僕の隣に目をやれば、早川さんもさすがにぐったりしていて、祥子さんから渡されたペットボトルの中身をやっとの思いで飲んでいる。早川さんも罪の意識はあるのだろうか。いや、そんな気持ちなどにはなっていないだろう。
こんな状況に僕を巻き込んだのは早川さんだし、祥子さんが言うような『したたかさ』があるのなら、これくらいは大したことはないはずなのだ。
早川さんはまたガウンを羽織ると、僕より先にバスルームに向かった。寝室に残された僕に祥子さんが言った。
「お疲れ。何とかなったじゃない」
「はい。でも、これで良かったのでしょうか」
「何が?」
「こんな形で飛鳥さんとセックスしてしまって」
祥子さんは僕の肩をポンと叩いて言った。
「何言ってんの。あの子が自分から言い出したんだから、気にすることはないわよ。それに飛鳥とやれたんだから、あんたは幸せモンかもね」
祥子さんはそう言うと撤収の準備に部屋を出て行った。僕は乱れているベッドシーツを眺めながら思った。
これで良かったのだろうか。僕の中で収まりかけていた怒りの炎がまた少しずつ大きくなると同時に、小さな正義感も頭をもたげるのだった。
僕と早川さんは撮影も終わりスタッフも引き上げると言うので、彼等と一緒にマンションを出た。監督は一つ大きく背伸びをすると、もう一人の男とジャンパーの男に言った。
「お疲れ。どうだ、少し早いけど飲み行くか?」
もう一人の男は、それが恒例であるかのように荷物の積みこみの作業をしながら答えた。
「いいですよ。いつもの店ですね」
「ああ、先に行っているから」
「分かりました」
監督はそれだけ言うと、タクシーを捕まえる為に表通りに向かって歩いて言った。残された男がジャンパーの若い男に訊いた。
「お前はどうする?」
ジャンパーの男は申し訳なさそうに頭を掻いていた。
「すいません。今日はちょっと……」
「そうか。なら、俺だけで行くから、車を事務所に戻して道具も片付けておいてくれるか」
「いいっスよ」
その男も監督と同じように表通りに向かって行った。残されたジャンパーの男は残りの資材を車に積みこんだ後、祥子さんに尋ねていた。
「祥子さんはどうします?」
祥子さんは何事かを考えていたようだったが、やがて気を取り直して言った。
「私も今日は止めておくわ。ちょっと行きたい所もあるし、あんたは車と道具をよろしく」
「分かりました。じゃあ」
その男はそう言うと車を走らせるのだった。それを見送った祥子さんが僕達の方に向かって言った。
「飛鳥、今日はお疲れ。そこのあんたも今日は色々あって大変だったと思うけど、まぁ、いい経験が出来たぐらいに思っていればいいわ。じゃあ、またね」
祥子さんはそう言うと颯爽と歩いて言った、早川さんはその後姿に「お疲れ!」叫びながら手を振るのだった。