第46話 ご報告・PTA改革のその後⑥

文字数 1,789文字

 さて何から改革すべきか。
 私たちはまず、会員である保護者と教職員にアンケートを取りました。本当に必要な活動を絞り込んでいくためです。
 このアンケート作成や結果の集計でも、ボスママが大活躍。まったく彼女の仕事が素晴らしすぎて、他のメンバーの出番がないぐらいでした。

 私は副会長として彼女の働きに感謝し、彼女の能力を褒め、時には意見を差し挟みましたが、そうするとボスママはなぜか冷たい反応……。
 私にとやかく言われること自体が不愉快だったようです。自分が改革の主導権を握りたいからだなとわかってきましたが、こんな時はこちらも反応し過ぎないことが大事。淡々とやるのみです。

 私は敢えて他のメンバーを褒めるようなこともしたのですが、この手は駄目なようでした。せっかく良い仕事をしてくれたそのメンバーがボスママの目を恐れ、かえって萎縮してしまうのです。
 ああ、リーダーって難しい! こういう時、やはり私の社会経験の少なさが露呈します。

 それでも改革が前に進んでいるのはボスママのおかげですから、私はとにかく運営を続けました。でも舵取りの手を放さぬ私に、今度はボスママがSNS上で攻撃してくることも。
 こうなってくると、また例の繰り返しです。多くのメンバーは怖がって既読スルーを徹底。SNSはほとんど私とボスママだけのやり取りになってきます。

 一方、リアルな会議では全員で活発な議論ができていたので、そこが救いでした。私は次第にSNSを会議の代替として使うことを諦めるようになり、リアルな会議を増やしたいと思いました。
 でも会議は月にたった一度。仕事を抱える人が多いので、会議の回数はそう増やせません。となると、改革だからといってあれもこれも欲張って変えていくのは難しそうでした。

 今、最低でもやるべきこととは何か。
 考えに考え、私は「強制をなくす」という結論に行き着きました。入学式の後、PTA役員が「お子さんが在学中に一度はやってくださいね」という呼びかけをするのが恒例になっていましたが、これ、すこぶる評判が悪いのです。
 全員がやるべき、という価値観を押し付けるからでしょう。つまりやらない人が叩かれるわけです。これがプレッシャーとなって多くの人を苦しめています。
 やはりこの強制感を消すレベルにまではもっていきたいと思ったのです。

 私たちは保護者アンケートの結果を分析し、必要な部分とそうでない部分とを峻別しました。さらにはその都度希望者を募り、集まった人たちでやっていくことができるよう、大きく組織の形を変えていきます。
 学校のため、子ども達のために必要な組織のみを残し、それもその時に集まった人数でできる範囲のことしかやらないことにしました。山のようにあった各種のマニュアルは、もともと役員の負担を少なくするために作られたものでしたが、活動の自由度を損なうのでほとんどすべてを廃止することに。

 私たちは喧嘩しながらも(笑)、よくやったものだと思います。
 学校側に相談したら、それで問題ないとのこと。むしろ保護者からの苦情が減って助かる、と副校長先生が喜んでいました。ここは中学校ならではの事情もあるでしょう。幼稚園や小学校と違い、子供たち自身ができることも格段に増えていますから。
 しかしどうやらPTAの仕事って、その程度の社会貢献しかできていなかったようなのです……このあたりはちょっと複雑(笑)。

 そして最終段階。
 当然のことながら、会則を大幅に変えねばなりませんでした。会則は過去に何度か修正されたことはあったものの、基本的に全員を巻き込むように作ってあったからです。
 そう。公平であろうとすれば、負担を分散しようとするのは当然のこと。必要だからみんな協力してね、というのが今までの会則だったのです。

 つまり希望者だけでやるというのは、不公平を承知で手を挙げてくれる人を待つ、茨の道なのです。「税金は、払いたい人だけが払ってくれればいいよ」なんて言い出したら、誰が税金を払うでしょう?
 それでも時代の要請ならば、不公平をある程度受け入れていくのもアリなのでは、というのが私たちの結論でした。活動には楽しい部分ももちろんあります。その楽しさをアピールしつつ、参加しやすいクリアーな雰囲気作りを徹底しました。

 どんどん変えていきましたが、まだ最後に難関が残っていました……。
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