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文字数 386文字

 母親が知人から聞いた話では、飲んべヤスには大学時代に付き合っていた彼女がいた。

 二人は結婚の約束までしていたらしいが、何かの理由で結婚を反対された。

 その後二人は、それぞれの故郷に帰り、離れ離れになった。

 そうこうする内に、彼女は見合い結婚をしてしまった。

 いまだに彼女のことを忘れられない飲んべヤスは、その後ずっと独身をつらぬいている。

 クラシック音楽を聴くようになったのも彼女の影響らしい。

 飲んべヤスは、放課後オレが家を訪ねる頃にはいつも酔っぱらっており、足元がふらついている。

 飲んべヤスは、静かにクラシック音楽を聴きながら酒を飲み、

「ユウコと仲良くしてくれてありがとね。あいつも母親に似て、生意気なところもあるけんど、根はええこやけん」

 と何度も同じことをいう。

 アル中の症状について詳しく知らないオレは、同じことを何度も繰り返すのも病気のせいだと思っていた。
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