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文字数 423文字

 オレはもうお金のことなどどうでもよかった。ただ、タッチンの走る姿を見て感動していた。

 ユウコやガチャコも必死に応援している。いつもクールにかまえているコウタロウまでが、大きな声で応援していた。

 二人は必死になって、並走している。最後は、まるで短距離走のような感じだった。

 タッチンがわずかに早くゴールした。二人はそのまま倒れこんだ。タッチンが走る前に考えていた、ピースサインで決めるなんていう余裕などなかった。

 しょぼい大会の、しかも一般の部の前座あつかいの小学生の部にしたら、けっこう感動的なシーンだった。

 見物人等から、割れんばかりの拍手が起きた。

 オレたちは、倒れたタッチンに駆け寄り、かわるがわるタッチンと抱き合って喜んだ。ただし、タッチンが涙ぐんでいたのを見て、少し笑っちゃったけどね。

 そんなわけで、六千円で巨人の星のコミック本を買い、残ったお金でタミヤの戦車まで買った。オレのお金で買ったものだから、母親には文句いわれずにすんだ。

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