文字数 431文字

 次のブーチンは、審判のはじめの声がかかると五秒もしないうちに、面を決められた。

 二本目も、あっという間に小手を決められた。あまりの早さに、応援する暇もない。

 ブーチンは、一回も打って出ることすらできなかった。

 三番目のチンペイは、かけ声だけはエロチンやブーチンよりも出していたが、かまえたときからへっぴり腰で、相手に打たれないように逃げ回り、最後にコーナーに追いつめられて、面を決められた。

 二本目は何を思ったのか、突然上段にかまえた。上段の練習なんてしたこともないのに、上段にかまえるなんてありえない。

 どうせ時代劇で、上段でかまえるサムライがカッコよかったからマネをしたんだろう。

 オレは思わず笑ってしまった。メチャクチャな剣道だったからだ。まるでガキのチャンバラだった。で、すぐに飛び込み胴を決められ、負けてしまった。

 後でじいちゃんから「ふざけたことをするな」と怒られていた。

 オレたちは、地方のちっぽけな大会で、初戦敗退というみじめな結果に終わった。

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