第32話:日本の金融危機と土地神話崩壊

文字数 1,581文字

 しかし、バブル崩壊後は、イ・アイ・イ・インターナショナルへの多額の融資の焦げ付きを中心とする不良債権を抱え経営不振に陥り1998年10月に制定された金融再生法の下で破綻認定され国有化。日債銀はバブル崩壊で膨らんだ不良債権を飛ばしで処理したが1998年12月の金融調査で債務超過と認定され国有化された。銀行が破綻した場合、その銀行をメインバンクとしていた企業も倒産の危機に落ちいった。

 貸出枠が縮小して行く中で、他の銀行から改めて融資を受けるのは困難であり、景気全般も悪く好業績も望めない中では、なおさら新たな融資を引き出すことは困難。結局融資を得られず倒産に至る企業も多かった。日本長期信用銀行を再生する過程で、同銀行を買収した投資組合は、取引のあった企業を破綻に追い込んで積極的に瑕疵担保条項を活用して利益を確保する行為に出た。

 その結果、ライフ、そごう、第一ホテル等が破綻し政府、金融機関の暴挙との批判を浴びた。個人向け融資機能の弱い金融機関が住宅資金需要に応えて設立した住宅金融専門会社であるがバブル期前後には、金融機関自身が住宅ローン市場に参入し住専は本来のターゲットである住宅ローン以外の不動産事業に注力。優良な債権を銀行等が占有したため住専はリスクの大きい物件に融資せざるを得なかったと言われていた。

 バブル崩壊後は融資先が破綻するケースに加え、担保の土地も値下がりし融資の回収が見込めない不良債権が増加。住宅金融専門会社7社のうち6社が破綻。破綻に際しては、住専に多額の資金を融資していた農林系金融機関や銀行を保護するために公的資金が注入。一方、案件として小粒であり従来は銀行から重視されていない個人相手の住宅ローンが、バブル崩壊後の不況期の中ではリスクが低い事から注目を浴びた。

 それに注力する銀行も現れた。なお国際業務を行う金融機関の自己資本比率の基準「BIS」として8%が示された。しかしBIS そのものでは、国内業務に限った場合などの個別の規定を設けておらず、日本では国内の業務に限る金融機関4%で良かった。経営状況を勘案して、海外から撤退して業務を国内に限る邦銀もあった。金融機関が、経営に問題がない企業に対しても貸し出しに慎重になった。
 
 新たな融資を断ることを「貸し渋り」。既存の融資を引き揚げたりすることを「貸し剥がし」という。銀行を取り巻く環境が激変する中で金融機関は、大きく広げていた貸し出し枠を自己資本比率を満たすよう縮小する必要に迫られた。これに応じて、過剰に貸し付けていた融資を、半ば強引とも見える手法で引き上げる貸し剥がしも頻発し、景気の悪化に輪をかけた。

 突然に全額一括返済を求めるほか、それまで定常的に融資を繰り返してきたものを一方的に停止する事案も多くあった。また、「今後も融資を継続するために」「内部処理の都合で」「新規・追加融資を纏めて一つの枠にするために」などの説明をもって融資を一旦引き上げたところで、前言を翻して融資に応じない「詐欺まがい」などである。貸し剥がしにより運転資金を絶たれて倒産に追い込まれる企業も続出。

 融資の約束を反故にされたとして訴訟に持ち込んでも、多くの場合は次の融資は口約束でなされるため、決定的証拠に欠け、借りた企業に不利になった。また、銀行の融資の判断が優先されることが大半で、結局泣き寝入りするケースが多い。その他に、故なく、あるいは些細な理由をもって預金と融資を相殺して引き揚げる、など借り手側から見て強引な手法が採られることもあった。

 また、新規の融資にも消極的な姿勢を示し、貸し渋りとの批判もあった。ただし、銀行に融資を申し込んで断られるとすぐに貸し渋りだという企業経営者が多いが、実は財務内容が悪かったり、過去に会社が倒産して、信用力のない企業も中には見受けられた。
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