プロメテウス (2012)

文字数 977文字

【ハードSFの仮面が嬉しいサスペンスサーガ】 2012/8/14



尊敬する小松左京氏の短編【岬にて】の中に僕の好きな語りがある:

『年を取ると宇宙が問題になりますか?』
『近代物理学で言っている宇宙ではないよ。宇宙のイメージだ・・・・・
 物理学は、イメージを作る手段の一つにすぎん・・・。
 問題になるのはその中に自分が含まれ、
 自分の中を貫いて流れていくことを感じさせる 宇宙だ・・・。
 人間がずっと古代から、・・・まだ文明もきずきあげぬころから、
 野獣や鳥たちと一緒に感じていた、あの宇宙だ・・・。
 生まれ、生き、人生をきずいた上で、さらにその先に年をとって死んでいくには、
 宇宙の一番良く見える所で、毎日それを眺め、呼吸しなくてはならん。
 幸福な死に方というものは、突然死ぬことではなくて
 次第次第に、地上の存在を消して行き、透明になって宇宙の中へ消えていくことだ・・・』

翻って、リドリー・スコットの宇宙観は即物的だ。
100兆円もの資金をかけて人類創造主の招待に呼応した理由が「永遠の命」とは・・・!
創造主に不死の恵みを請うための宇宙旅行がかくして始まる。
宇宙人起源説がダーウィン進化論をあっさりと排除している。
ただし、シネマはこうでないと面白くない。

頭でっかちの宇宙観ではなく冒頭からわかりやすい説明シーンが展開される。
ヒューマノイドが太古の地球にジーンを拡散するシークエンスは
リドリーフィルム真骨頂の映像美だ。
冷凍睡眠宇宙旅行の説明は、アンドロイド乗務員の不思議な魅力と合わせて丁寧親切だった。
一見、本格的ハードSFの世界に浸れるのではないかという淡い期待さえ感じさせる
イントロダクションだった。
無論、リドリーフィルムがそっち方面に向かう訳も無い。

探検チームが招待された惑星に到着してからはあれよあれよのサスペンスアクションの連続。
人類創造生命体の不可解な凶暴性は結局本作では解明されないまま「乞う次回作」となる。
新種のエイリアンが誕生するラストシーンは戦慄するのみ。
ハードSFの仮面をかぶった見事なサスペンスサーガが始まった。
まさに「乞う次回作」

老婆心:
アンドロイド演じるファスビンダーが上手だ、アラビアのロレンスに憧れる姿は微笑ましい。
しかし彼にまつわる多くのなぞも次回に持ち越された。
監督、ここはこだわりも程々にして、さっさと2作目お願いですよ。

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