異人たち (2023)

文字数 694文字

【愛の多様性 】2024/4./19



原作が山田太一小説(異人たちとの夏)の英国シネマという興味が先行してしまった。
小説は日本でもシネマになり(1988年)、片岡鶴太郎さんがお笑いの イメージを拭い去り高級演技をしたという印象が強く、逆に物語のエッセンスは三十数年の時の彼方に消え去ってしまっていた。
と言って、昔のシネマを見直すほど無粋でもない、2023年版、英国版を予断なくしっかりと拝見してきた。

ゲイの主人公は小さい頃に比べればセックスマイノリティによるダメージは少なくなったというものの、12歳に両親を失ったこと、その後一人で生き抜いてきたことなどから人との関わりを極力排してきた結果、心の中に大きな寂寥感を抱え、寂しさに押しつぶされようとしていた。
   
昔両親と住んでいた田舎の家を訪れると、そこには両親が待ち受けている・・・脈絡なく唐突な幽霊との出会いだった。
おそらくこのシークエンスは原作から欠かすことはできないところであろう、英国版父親役もいい味を出している、まさに鶴ちゃんとの競演だった。

ここからは本シネマのキーになる「異人たち」の扱いが日英の差、三十数年時間差で大きく隔たることになる。
しかしポイントは主人公の性愛であり、両親の無償の愛だった。
躊躇していたゲイの愛を両親に認められ、主人公が向かった先にあった真相も現在進行形にアレンジされている。
   
愛する相手を守ろうとする主人公、霊の存在を信じる宗教の強靭さ潔さが最後に僕を混乱させる。
人が誰を愛するかは、その人の権利だという結論・・・まだまだ日本は多様性において何周回も遅れているようだ。
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