終戦のエンペラー (2012)

文字数 883文字

【二人のエンペラー】 2013/7/28



オリジナルタイトルは、ずばり【エンペラー】。
だが、【このエンペラー】は
未曽有の大敗北を喫した日本のエンペラーだけを意味していなかった。
日本を開放し、新しい国を建設しようと図ったマッカーサー元帥をも意味していた。

物語はマッカーサーの軍事秘書官である知日派フェラーズ准将を軸に展開される。
フェラーズは10日間の期限内に
天皇の戦争責任の有罪・無罪を調査し報告する任務を与えられる。

この調査が本シネマの秀抜たる見所になっている。
近衛文麿が力説した「日本開戦弁護」による欧米批判と
「日本人戦争熱」を分析する反省は簡潔にして要を得ている。
木戸内府が打ち明かす「終戦詔書」録音盤を巡る皇居占拠と反乱部隊秘話は
天皇の平和的決断を示唆するものだった。
しかし、天皇が戦争責任から逃れられる確証からはいずれもほど遠いものだった。

連合軍最高司令官たるマッカーサーエンペラーの目論見は、
天皇を利用して日本の共産化を阻止し、統治の秩序を取り戻すことにあった。
しかし、フェラーズ准将のレポートはあいまいな感傷的結論としての
「天皇無罪」でしかなかった。
マッカーサーエンペラーの卓越した政治嗅覚は「天皇との直接面会」を求める。
かの有名なアメリカ大使館への行幸は、
かくしてフェラーズ准将の畏敬を込められた敬礼で迎えられる。
歴史に残る1枚の写真、
フロックコートにシルクハットのエンペラーと平服のエンペラーが立ち並んでいた。

ジョン・トーランド著「大日本帝国の興亡」の中にマッカーサー元帥の次のような証言がある:
「骨の髄まで感動した、彼は生まれながらにして天皇であった。
 しかし、同時に生まれながらにして日本の最高の紳士でもある人物と対面しているのを、
 私は悟った」
天皇はマッカーサーにこう語ったとされる:
「将軍、わたくしがここに来たのは、政治的、軍事的あらゆる決定、
 そして戦争遂行上わが国民が行った行為に対するただ一人の責任者として、
 わたしを、あなたが代表する連合軍の判断にゆだねるためであります」

かくして象徴としての天皇は存続し、
日本は復興を遂げることになる。

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