美と殺戮のすべて (2022)

文字数 678文字

【姑息な社会貢献ウォッシュを暴く 】2024/5/14



女性写真家 ナン・ゴールディンの反骨のドキュメンタリーシネマだった。
1980年代 ゲイ・セックス・サブカルチュア―で活躍したとのことだが、当時も今に至っても存じ上げなかった、接点がなかったのだろう。
   
本シネマは、彼女がオキシコンデン(商品名)薬害の訴訟に尽くすドキュメンタリー、安易な投与の結果全米で50万人以上が命を
落としており、製薬会社(パーデュ・ファーマ社)とオーナ一一族であるサックラー家を糾弾する詳細が映像に収められている。

全米に広がったオキシコドン成分の鎮痛剤渦は、ほかの媒体でも知ることがあったが、本シネマ主人公であるナンの告発アプローチは ユニークで強烈だったことが本シネマから理解できた。
   
サックラー家がオキシコンデンで儲けた莫大な利益を美術館はじめ公共施設に寄贈し、サックラー家の名をそこに留めている点を突く。
自分の作品(写真)が展示されている美術館で、空の薬剤や処方箋を散布しダイイン・パーフォーママンスで注目を集める。
サックラー家からの寄付を拒否しないのなら自分の作品を引き上げると、最後にはサックラーの名前を施設から外せと。

彼女たちの抗議もあって、寄付を受け取らずサックラーの名前を消し去ると表明する美術館が多数続く。
損害賠償金を求めることなく、生身の人間の視点で社会貢献ウォッシュを正した抗議活動、その背景に潜んでいたナルの姉の悲哀に心が揺れて仕方がなかった。
抗議活動シーンの間に挟まれる、ナルの貴重な写真スライドショーも一見の価値あり。
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