22:アタシは夢を応援できるタイプ

文字数 1,166文字

 次の日。またまた昼休みのことだよ。
 今日も3人で弁当を食べようと、机をくっつけあったら。
ミユさん、昨日の動画観たよ。抹茶タルト、美味しそうだったね。あれ、新メニューなんだっけ
新メニューだって、動画で紹介したでしょう。わかっているなら、聞かないで
チユキには難しいことはわかんないけどさ、ミユさんがやっぱり料理上手なんだなってのはわかった。チユキじゃ、不器用で生地焼くのだって失敗しそう
たくさん練習したんだから、あれくらい出来て当然よ
そっか。凄いね
…………何の用?
(なんだろう……この会話が噛み合っていない感じ)
(ミユミユ、すっげぇ不満そうだな)
チユキも、ミユさんと一緒にお昼食べたいなって。ほら、スイーツ作りの話とか聞きたいし
……パティシエールに興味があるわけ?
(うん? ちょっと、ミユちゃんの顔がほころんだ?)
作るのはちょっと。不器用だし、チユキは食べる専門だから

あっ、そう。

あなたと話すことは何もないわ

 ミユちゃんは立ち上がり、素早く弁当をまとめて廊下へ出て行ったよ。
あっれぇ〜〜。やっぱりだめかぁ
 頭をかくチユキちゃん。
チユチユはなにがしたかったんだ?
別にパティシエールに興味ないんなら、あいつから無理に話を聞きださんでも、よくないか?

んー。興味はないんだけど、どうでもいいってわけでもなくてぇ
チユキちゃんは、ミユちゃんと仲良くなりたいの?
そう、ソレ!
 チユキちゃんが私を指差す。
チユキはね、夢を持ってないんだ。毎日テキトーに、友達とお喋りしたり、お買い物したり、ネットしたり。楽しいけどね。でも、夢とか将来とか、そーゆーのはわかんなくて
別にフツーだろ。サヤサヤみてーに好きなことで稼いでたり、ミユミユみてーに夢追っかけてるヤツの方が珍しいぜ
そーなんだけど。
だからね、チユキは凄いって思う
ミユちゃんのことが?
そう!

チユキは夢を持ってないから、夢のために頑張れてるミユさんのことは、本当に凄いなって、尊敬してる!

マジリスペクトっしょ!!

だからかなぁ。ミユさんのそーゆー、夢の話っていうの?
聞きたいかなぁって
(チユキちゃんの気持ちもわからなくはないけど、こういうの、多分ミユちゃんが嫌いなタイプだよね。本気で頑張ってる人とか、本気で接してくれる人以外に褒められるの、嫌ってるし)

チユチユは、夢が羨ましいんだな

あー、そうかも!

うん! マジそれっしょ! うんうん!!

だから、夢を追ってる人の話が聞きたいのかも!!
なるほどなあ
マオちゃんはどうなの?
ん? アタシ?
アタシは別に、夢を持ちたいとは思わねえなぁ。それなりにうまく社会に溶け込んで、ほどほどにやっていくんだ。ほどほどに生きるためなら、全力を出す。って、ちょい矛盾してっか?

ううん、わかるよ。

マオちゃんは、そういうタイプだよね

だから、アタシは夢を応援できるタイプなんだな
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登場人物紹介

夏木紗彩(なつきさあや) 高2


夢を諦めた少女。幼い頃からパティシエールに憧れていたが、幼馴染のミユに実力差を見せつけられ、心が折れた。今はコンビニやお店のスイーツをレポする動画「紗彩チャンネル」を運営。そこそこ人気でお小遣い稼ぎにはなっているが、一方で夢を追うキラキラした人たちに嫉妬していて、いつもどこか不満げ。夢を諦めた瞬間から、スイーツの幻影が見えるように。

春風ミユ 高2


夢を本気で追う少女。紗彩の幼馴染で、実家は人気スイーツ店「ハルカゼ」。幼い頃からパティシエールを目指し修行している。スイーツへの情熱が凄い。一方で、本気で努力せず「できない」と口にする人の気持ちが理解できず、女子とは喧嘩になりやすい。そのため、紗彩以外の友だちがいない

クリームの声が聞こえるらしい。

氷崎マオ 高2


夢を応援できる少女。いつもゲーセンで遊んでばかりの帰宅部。友達も多く、リア充。勉強もちゃんとするし、成績は平均より少し上程度。なんでもそこそこにこなせるけど、特別得意なことがあるわけではなく、夢を持っているわけでもない。だから、学生でありながら好きなことで金を稼ぐ紗彩が羨ましくて、それなのになぜ不満を抱いているのか、理解できずにいる。

冬兎チユキ 高2


夢追い人を尊敬し、夢を持ちたい少女
今が楽しければそれでいいじゃん、という考えで適当に生きている。甘いもの大好き、紗彩の動画もチェックしている。普通の女子高生。ミユには嫌われている。

アーニャ 20歳


夢のために他を犠牲にした女。売れない大道芸人。好きなこと以外はやりたくない。だけど、好きなことのためならなんでもする。様々な芸をこなし、歌もダンスもモノマネも出来るし、はやりのネタにはすぐに飛びつく。夢のために高校を中退している。努力家。


黒井先生 


夢を追い別の道にたどり着いた大人。主人公たちの担任にして、体育教師。かつてはプロ野球選手になりたいという、平凡だが大きな夢を抱いていた。レギュラーにもなれず夢に破れてからは、応援してくれた監督に感謝し、彼のような教師になりたいと考えた。必死に勉強し、今の立場にある。


スイーツの幻影


紗彩にだけ見える。「夢を諦めて本当にいいの?」「後悔してない?」と、事あるごとに語りかけてくる。

クリームの幻聴


ミユにだけ聞こえる。心の迷いを表しているらしい。

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