04:YouTuber

文字数 811文字

 高校生になった私はYouTuberになったよ。

 スイーツを紹介する、スイーツ専門のYouTuber。

~高2の12月~
はい。SAYAでーす。今回紹介するのは新発売したコンビニスイーツ。ショコラオランジュのカップアイスです!
こちら、なんとなめらかチョコ、チョコムースアイス、チョコレートアイスという3つの層に分かれているんですね
上にふりかけられているのは、アーモンドクラッシュ。2つのアイス層の間にはオレンジピール入りのソースが挟まっているという、贅沢な一品となっています。ではこちら、さっそくいただいちゃいましょう。
うわっ、硬っ!

はわわ、木のスプーンが刺さっちゃった。

まるで聖剣ですねこれ!

コンビニでもらえるような木のスプーンでは、折れてしまう危険性があります。

ほんと、それくらいの硬さですよコレは!

少し溶かしてから頂くのも手ですが、ええい!
いっちゃいます!

はわ〜〜〜〜!!


濃厚……!

圧倒的っ……濃厚っ……!!


チョコアイス自体は……ややビター……!!

しかし……!!

思いのほか……! 濃いっ……! オレンジの味……!!


         ざわ…

                 ざわ…

見た目はチョコアイスですが、オレンジアイスとしてもいけちゃいます。


約200円と少し高めですが、その価値は十分にありますね
 軽いレポを加え、あとはひたすら私が食べているシーンを映すだけ。そんな動画なのにまあまあの人気を得られているのは、私が可愛いからなのかな。
 それとも、単に女子高生だから?
 とにかく、この日も動画の撮影を終えて、アップロード。
 追加のスイーツでも買ってこようかと外に出れば、「ハルカゼ」の前には制服姿の女の子たちが列を作っていたよ。放課後の時間帯だから、学校帰りの寄り道に来ているというわけ。いつも通りの光景。
 ちらりと店の窓に目をやると、無表情でケーキをショーケースに並べるミユちゃんと、笑顔で接客中のユキさんが見えた。
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登場人物紹介

夏木紗彩(なつきさあや) 高2


夢を諦めた少女。幼い頃からパティシエールに憧れていたが、幼馴染のミユに実力差を見せつけられ、心が折れた。今はコンビニやお店のスイーツをレポする動画「紗彩チャンネル」を運営。そこそこ人気でお小遣い稼ぎにはなっているが、一方で夢を追うキラキラした人たちに嫉妬していて、いつもどこか不満げ。夢を諦めた瞬間から、スイーツの幻影が見えるように。

春風ミユ 高2


夢を本気で追う少女。紗彩の幼馴染で、実家は人気スイーツ店「ハルカゼ」。幼い頃からパティシエールを目指し修行している。スイーツへの情熱が凄い。一方で、本気で努力せず「できない」と口にする人の気持ちが理解できず、女子とは喧嘩になりやすい。そのため、紗彩以外の友だちがいない

クリームの声が聞こえるらしい。

氷崎マオ 高2


夢を応援できる少女。いつもゲーセンで遊んでばかりの帰宅部。友達も多く、リア充。勉強もちゃんとするし、成績は平均より少し上程度。なんでもそこそこにこなせるけど、特別得意なことがあるわけではなく、夢を持っているわけでもない。だから、学生でありながら好きなことで金を稼ぐ紗彩が羨ましくて、それなのになぜ不満を抱いているのか、理解できずにいる。

冬兎チユキ 高2


夢追い人を尊敬し、夢を持ちたい少女
今が楽しければそれでいいじゃん、という考えで適当に生きている。甘いもの大好き、紗彩の動画もチェックしている。普通の女子高生。ミユには嫌われている。

アーニャ 20歳


夢のために他を犠牲にした女。売れない大道芸人。好きなこと以外はやりたくない。だけど、好きなことのためならなんでもする。様々な芸をこなし、歌もダンスもモノマネも出来るし、はやりのネタにはすぐに飛びつく。夢のために高校を中退している。努力家。


黒井先生 


夢を追い別の道にたどり着いた大人。主人公たちの担任にして、体育教師。かつてはプロ野球選手になりたいという、平凡だが大きな夢を抱いていた。レギュラーにもなれず夢に破れてからは、応援してくれた監督に感謝し、彼のような教師になりたいと考えた。必死に勉強し、今の立場にある。


スイーツの幻影


紗彩にだけ見える。「夢を諦めて本当にいいの?」「後悔してない?」と、事あるごとに語りかけてくる。

クリームの幻聴


ミユにだけ聞こえる。心の迷いを表しているらしい。

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