13:なにこれどんなプロポーズなの!?

文字数 967文字

ミユちゃん。宣伝、手伝ってあげよっか?
え?
(急にどうしたのかしら……?)ドキドキ
私、今YouTuberやってるんだ
知ってるわ。見てるもの

(チャンネル登録もしているし、動画を保存してスマホに持ち歩いているもの。

だって、紗彩のスイーツを食べている時の笑顔、私も食べられたいって思うほど可愛ry)

見てて、くれたんだ
ええ。それで?
うん。だから、私ならもっと効果的に宣伝できると思う。それに、ほら。ミユちゃんがスイーツを用意してくれて、私がそれを動画にだせたら、私的にも美味しいし?
…………

(それって、私のスイーツが食べたいってことよね?

なにこれどんなプロポーズなの!?)

ミユちゃんがケーキ作ってるところを配信したり、ね。それなら、異物混入もないって、きっとわかるでしょ?
……そうね。なら、お願いするわ

(きゃ~~~~! やったわ! また紗彩と一緒にスイーツを作れるのね! よかった、嫌われていたわけじゃなかったのね。

……あれ? でも、食べるだけ? やっぱり、スイーツ作りは再開しないのかしら?)

 私は驚いたよ。ミユちゃんが頷いたことに、じゃない。
 自分の提案に、自分で驚いた、
 結局、私は自分が一番ちやほやされたいんだ。だから、誰かを応援するなんて、出来ないんだ。

 応援することの出来ない私が。
 ミユちゃんに嫉妬しているはずの私が。
 ミユちゃんを助けようとするなんて。

(やっぱり、私はYouTuber活動を心からやりたがっていた……?)
違うよ。素直になれないから、誤魔化してるだけ。本当はスイーツを作りたいけど、他のことで誤魔化してるだけ
(スイーツの精霊がうるさいけど、そんなことはないはずだよ)
 とにかく、言い出したからにはやるしかない。
それじゃ、早速撮影しよっか。カメラもってくるから、店でまってて?
ええ

(私は嫌われていなかった。紗彩は、また私とスイーツに関わろうとしている。

それなら、紗彩にスイーツ作りを再開させる方法は、追々考えればいいわね。紗彩はパティシエールになるべきなのよ。私より、才能があるんだから)

(なにより、私は2人で競い合い、楽しみながらスイーツを作りたい。あの頃みたいに)
 ミユちゃんが店に戻る。
やれやれ。まだ逃げ続けるんだ。こんなことしても、辛いだけなのに
 私はデタラメを言うスイーツの精霊を無視して、家に戻った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

夏木紗彩(なつきさあや) 高2


夢を諦めた少女。幼い頃からパティシエールに憧れていたが、幼馴染のミユに実力差を見せつけられ、心が折れた。今はコンビニやお店のスイーツをレポする動画「紗彩チャンネル」を運営。そこそこ人気でお小遣い稼ぎにはなっているが、一方で夢を追うキラキラした人たちに嫉妬していて、いつもどこか不満げ。夢を諦めた瞬間から、スイーツの幻影が見えるように。

春風ミユ 高2


夢を本気で追う少女。紗彩の幼馴染で、実家は人気スイーツ店「ハルカゼ」。幼い頃からパティシエールを目指し修行している。スイーツへの情熱が凄い。一方で、本気で努力せず「できない」と口にする人の気持ちが理解できず、女子とは喧嘩になりやすい。そのため、紗彩以外の友だちがいない

クリームの声が聞こえるらしい。

氷崎マオ 高2


夢を応援できる少女。いつもゲーセンで遊んでばかりの帰宅部。友達も多く、リア充。勉強もちゃんとするし、成績は平均より少し上程度。なんでもそこそこにこなせるけど、特別得意なことがあるわけではなく、夢を持っているわけでもない。だから、学生でありながら好きなことで金を稼ぐ紗彩が羨ましくて、それなのになぜ不満を抱いているのか、理解できずにいる。

冬兎チユキ 高2


夢追い人を尊敬し、夢を持ちたい少女
今が楽しければそれでいいじゃん、という考えで適当に生きている。甘いもの大好き、紗彩の動画もチェックしている。普通の女子高生。ミユには嫌われている。

アーニャ 20歳


夢のために他を犠牲にした女。売れない大道芸人。好きなこと以外はやりたくない。だけど、好きなことのためならなんでもする。様々な芸をこなし、歌もダンスもモノマネも出来るし、はやりのネタにはすぐに飛びつく。夢のために高校を中退している。努力家。


黒井先生 


夢を追い別の道にたどり着いた大人。主人公たちの担任にして、体育教師。かつてはプロ野球選手になりたいという、平凡だが大きな夢を抱いていた。レギュラーにもなれず夢に破れてからは、応援してくれた監督に感謝し、彼のような教師になりたいと考えた。必死に勉強し、今の立場にある。


スイーツの幻影


紗彩にだけ見える。「夢を諦めて本当にいいの?」「後悔してない?」と、事あるごとに語りかけてくる。

クリームの幻聴


ミユにだけ聞こえる。心の迷いを表しているらしい。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色