69:チョコメロンパフェ

文字数 936文字

 翌日。12月25日。

 「ハルカゼ」には、動画を観てくれた沢山の人が、私とミユちゃんの共同作「スペシャルチョコメロンパフェクリスマスバージョン」を買いにやってきたよ。


 みんなが私たちのスイーツを買っていく光景を、私はレジをうちながら見る。


 そして、その夜。

 「ハルカゼ」2階。ミユちゃんの部屋。

私、これからスイーツパフォーマーとして、スイーツ動画にスイーツパフォーマンスに、新しいスイーツの開発にと頑張るよ
私も、「ハルカゼ」の娘として、一人前のパティシエールになるためにも頑張るわ
うん。それで、今後もいろいろ、コラボできたらなって思うんだ
SAYAと「ハルカゼ」で?

そうだけど、どっちかといえば、私とミユちゃんで。

これから先も、一緒にチョコメロンパフェ、作りたい

チョコメロンパフェを?

ミユちゃんのオリジナルスイーツである「チョコメロンパフェ」。

私が夢を諦めるきっかけにもなったスイーツ。

そして、そんな私が新しい道を歩みだし、はじめてミユちゃんと共同で作ったスイーツでもある

思い出のスイーツだ。特別なんだ。特別だから、ミユちゃんともっと一緒に作りたい。

ダメかな?

ううん。嬉しいわ。

本当はね、チョコメロンパフェは紗彩に食べてもらいたくて、考えたの

そうだったの?
私の考えたスイーツで、紗彩を喜ばせたくて。それがあんなことになるなんて

けど、そんなチョコメロンパフェが私とあなたをまた繋いでくれるのなら。

何度だってコラボするわ! やりましょう!

うん!

それじゃあさっそく、次のチョコメロンパフェを考えよう!

年越しに合わせて、蕎麦バージョンとか?
それはどうかしら?
ええー。面白いと思うんだけどなあ

 そんな風に、これから先、私とミユちゃんは違う道を一緒に歩んでいく。

 道の先に何があるのかはわからないけど、もう幻覚を見ることはないはず。


 だって、もう私は1人じゃないのだから。

 違う夢を追いかける私とミユちゃん。夢を応援してくれるマオちゃん。夢を探しているチユキちゃん。それに、アーニャさん。黒井先生も?


 私の周りには、いろいろな人がいる。みんなそれぞれ、ちょっとずつ違う道を進んでいる。

 だけど、一緒に進んでいる。そのことに気づいた私は、もう1人じゃないのだ。


とにかく、作りまくるぞー!
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登場人物紹介

夏木紗彩(なつきさあや) 高2


夢を諦めた少女。幼い頃からパティシエールに憧れていたが、幼馴染のミユに実力差を見せつけられ、心が折れた。今はコンビニやお店のスイーツをレポする動画「紗彩チャンネル」を運営。そこそこ人気でお小遣い稼ぎにはなっているが、一方で夢を追うキラキラした人たちに嫉妬していて、いつもどこか不満げ。夢を諦めた瞬間から、スイーツの幻影が見えるように。

春風ミユ 高2


夢を本気で追う少女。紗彩の幼馴染で、実家は人気スイーツ店「ハルカゼ」。幼い頃からパティシエールを目指し修行している。スイーツへの情熱が凄い。一方で、本気で努力せず「できない」と口にする人の気持ちが理解できず、女子とは喧嘩になりやすい。そのため、紗彩以外の友だちがいない

クリームの声が聞こえるらしい。

氷崎マオ 高2


夢を応援できる少女。いつもゲーセンで遊んでばかりの帰宅部。友達も多く、リア充。勉強もちゃんとするし、成績は平均より少し上程度。なんでもそこそこにこなせるけど、特別得意なことがあるわけではなく、夢を持っているわけでもない。だから、学生でありながら好きなことで金を稼ぐ紗彩が羨ましくて、それなのになぜ不満を抱いているのか、理解できずにいる。

冬兎チユキ 高2


夢追い人を尊敬し、夢を持ちたい少女
今が楽しければそれでいいじゃん、という考えで適当に生きている。甘いもの大好き、紗彩の動画もチェックしている。普通の女子高生。ミユには嫌われている。

アーニャ 20歳


夢のために他を犠牲にした女。売れない大道芸人。好きなこと以外はやりたくない。だけど、好きなことのためならなんでもする。様々な芸をこなし、歌もダンスもモノマネも出来るし、はやりのネタにはすぐに飛びつく。夢のために高校を中退している。努力家。


黒井先生 


夢を追い別の道にたどり着いた大人。主人公たちの担任にして、体育教師。かつてはプロ野球選手になりたいという、平凡だが大きな夢を抱いていた。レギュラーにもなれず夢に破れてからは、応援してくれた監督に感謝し、彼のような教師になりたいと考えた。必死に勉強し、今の立場にある。


スイーツの幻影


紗彩にだけ見える。「夢を諦めて本当にいいの?」「後悔してない?」と、事あるごとに語りかけてくる。

クリームの幻聴


ミユにだけ聞こえる。心の迷いを表しているらしい。

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