24:冗談も言えたんだね

文字数 723文字

 その日の夕方も、「ハルカゼ」にはお客さんの列が出来たよ。
 私はレジを担当するユキさんと、追加でスイーツを作るミユちゃんを撮影。
(応援するって決めたのに、結果が出て、やっぱりモヤモヤする。

やっぱり、私はスイーツ作りを諦めきれないでいるんだ……。
でも、だからってどうすれば……)

 列をすべてさばき切ると、すっかり夜になっていたよ。
紗彩、ありがとう
私はなにもしてないよ。むしろ、ずっと動画撮ってるだけで邪魔じゃなかった?
なにいってるのよ。その動画のおかげで、デマに気づいたお客さんが戻ってきてくれたんじゃない
……うん。そうだったね
 と、そこに。
まだお店やってる?
……なにしにきたの?
なにしにって、スイーツ買いにきたに決まってるっしょ。
あれある? チョコメロンパフェ
もう売り切れよ。マカロンならあるけど
じゃあ、マカロン。4個!
 ミユちゃんは色とりどりのマカロンを箱につめて、
400円よ
安いんだね。はい、500円
ちょうどいただくわ
なんで!?
おつりは!?
冗談よ。はい、100円
ミユさんって、冗談も言えたんだね
喧嘩売ってるの?
まさか。チユキはね、本当にミユさんのことが凄いって思ってるよ。
チユキには夢がないの。だから、夢が羨ましくて、夢のために頑張るミユさんを尊敬している。
だから、ミユさんの話を聞きたいし、仲良くしたい
ダメかな?
NO

即答!?

しかも英語!?

ろくに探しもせずに、夢がないだの羨ましいだの。いい加減なことを言う人とは仲良くする気がない。
本気を感じないの

夢がほしいのも、凄いって思ってるのも、本気なんだけど……
紗彩さんは、どうすればチユキがミユさんと仲良くなれると思う?
マオさんはミユさんを理解しろって言うけど、難しいよ~~
(ええっ、私にふる!?)
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登場人物紹介

夏木紗彩(なつきさあや) 高2


夢を諦めた少女。幼い頃からパティシエールに憧れていたが、幼馴染のミユに実力差を見せつけられ、心が折れた。今はコンビニやお店のスイーツをレポする動画「紗彩チャンネル」を運営。そこそこ人気でお小遣い稼ぎにはなっているが、一方で夢を追うキラキラした人たちに嫉妬していて、いつもどこか不満げ。夢を諦めた瞬間から、スイーツの幻影が見えるように。

春風ミユ 高2


夢を本気で追う少女。紗彩の幼馴染で、実家は人気スイーツ店「ハルカゼ」。幼い頃からパティシエールを目指し修行している。スイーツへの情熱が凄い。一方で、本気で努力せず「できない」と口にする人の気持ちが理解できず、女子とは喧嘩になりやすい。そのため、紗彩以外の友だちがいない

クリームの声が聞こえるらしい。

氷崎マオ 高2


夢を応援できる少女。いつもゲーセンで遊んでばかりの帰宅部。友達も多く、リア充。勉強もちゃんとするし、成績は平均より少し上程度。なんでもそこそこにこなせるけど、特別得意なことがあるわけではなく、夢を持っているわけでもない。だから、学生でありながら好きなことで金を稼ぐ紗彩が羨ましくて、それなのになぜ不満を抱いているのか、理解できずにいる。

冬兎チユキ 高2


夢追い人を尊敬し、夢を持ちたい少女
今が楽しければそれでいいじゃん、という考えで適当に生きている。甘いもの大好き、紗彩の動画もチェックしている。普通の女子高生。ミユには嫌われている。

アーニャ 20歳


夢のために他を犠牲にした女。売れない大道芸人。好きなこと以外はやりたくない。だけど、好きなことのためならなんでもする。様々な芸をこなし、歌もダンスもモノマネも出来るし、はやりのネタにはすぐに飛びつく。夢のために高校を中退している。努力家。


黒井先生 


夢を追い別の道にたどり着いた大人。主人公たちの担任にして、体育教師。かつてはプロ野球選手になりたいという、平凡だが大きな夢を抱いていた。レギュラーにもなれず夢に破れてからは、応援してくれた監督に感謝し、彼のような教師になりたいと考えた。必死に勉強し、今の立場にある。


スイーツの幻影


紗彩にだけ見える。「夢を諦めて本当にいいの?」「後悔してない?」と、事あるごとに語りかけてくる。

クリームの幻聴


ミユにだけ聞こえる。心の迷いを表しているらしい。

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