48:野外パフォーマンスだったら

文字数 1,180文字

ちょ、ちょっとまってよ。
そんな勝手に決めないで
教室って言ったって、場所がないでしょ。
素材を用意したりとか、お金もかかるし
まあ、そうだよな
う~ん……
あくまで方向性の1つとして、アリなんじゃない?
という話よ
方向性の1つかぁ



        ☆★☆★


 その夜、アーニャさんにツイッターのDMで相談してみた。


――というわけなんだけど、どう思うかな
場所が用意できたら、やるの?
うーん……
私が路上パフォーマンスをする時って、広場の使用許可を得てからやるんだけどね。
よかったら、そこでやってみる?
 アーニャさんの野外パフォーマンス。動画で何回か、観たことある。集まってくれたお客さんをいじったり、トークで盛り上げたり、子どものお客さんにはバルーンアートでつくったものをプレゼントまでしたり。


 アーニャさんも楽しそうだし、観ている人も楽しそうで。みんながハッピーになれる、すごいパフォーマンス。

(私だったら……あのレベルのパフォーマンス、できるかな……)
って、え? 私を誘ってるの? アーニャさんのパフォーマンスに?

それって、野外でスイーツ作るってこと?

そうそう。まず私がパフォーマンスで人を集める。そのあと、SAYAさんがその場でスイーツを作り始める。出来上がったスイーツをお客さんに食べてもらって

みたいな?

野外パフォーマンスだったら、数人分の材料を用意するだけでいいし、パフォーマンスを見てくれる人にアピール出来れば、実際に作ったスイーツの量以上の宣伝効果が見込めるでしょ?

つまり、パティシエールとしてのSAYAの名も広まるかもってこと。

あとで動画にして流せば、もっと広まるかな?


スイーツを作っている間、見ている人は退屈しないかな
そこは私がパフォーマンスで繋ぐよ
これならコストはあまりかからなくて、気軽に面白くできるでしょ?
そのかわりといってはなんだけど、動画には私の名前とかも出してね
それはもちろんそうするけど……いいの?
いいよー( ^ω^ )
言ったでしょ。私もやれることはやるんだって。SAYAさんとパフォーマンスして動画撮るの、面白そうだし、むしろやってほしいくらいだよ!

そっか
(私のスイーツで、アーニャさんのパフォーマンスやミユちゃんのスイーツみたいに、みんなを笑顔にできるかはわからない。アーニャさんのために集まったお客さんを、がっかりさせちゃうかもしれない)
(それでも、ここでまた逃げたら、逆戻りだ。ミユちゃんを応援できない、幻影もみる。そんな毎日に、戻っちゃう)
(ミユちゃんは私に気持ちを打ち明けてくれた。変わろうとしている。私も変わらなくちゃ。

今がターニングポイントなんだ!!)

わかった。やるよ!
そうこなくっちゃ!
ありがとう、アーニャさん!

いいってことよ(`・ω・´)

もっとも、野外になるか屋内になるかは予約してみないとわからないけど……やることは同じだよ

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登場人物紹介

夏木紗彩(なつきさあや) 高2


夢を諦めた少女。幼い頃からパティシエールに憧れていたが、幼馴染のミユに実力差を見せつけられ、心が折れた。今はコンビニやお店のスイーツをレポする動画「紗彩チャンネル」を運営。そこそこ人気でお小遣い稼ぎにはなっているが、一方で夢を追うキラキラした人たちに嫉妬していて、いつもどこか不満げ。夢を諦めた瞬間から、スイーツの幻影が見えるように。

春風ミユ 高2


夢を本気で追う少女。紗彩の幼馴染で、実家は人気スイーツ店「ハルカゼ」。幼い頃からパティシエールを目指し修行している。スイーツへの情熱が凄い。一方で、本気で努力せず「できない」と口にする人の気持ちが理解できず、女子とは喧嘩になりやすい。そのため、紗彩以外の友だちがいない

クリームの声が聞こえるらしい。

氷崎マオ 高2


夢を応援できる少女。いつもゲーセンで遊んでばかりの帰宅部。友達も多く、リア充。勉強もちゃんとするし、成績は平均より少し上程度。なんでもそこそこにこなせるけど、特別得意なことがあるわけではなく、夢を持っているわけでもない。だから、学生でありながら好きなことで金を稼ぐ紗彩が羨ましくて、それなのになぜ不満を抱いているのか、理解できずにいる。

冬兎チユキ 高2


夢追い人を尊敬し、夢を持ちたい少女
今が楽しければそれでいいじゃん、という考えで適当に生きている。甘いもの大好き、紗彩の動画もチェックしている。普通の女子高生。ミユには嫌われている。

アーニャ 20歳


夢のために他を犠牲にした女。売れない大道芸人。好きなこと以外はやりたくない。だけど、好きなことのためならなんでもする。様々な芸をこなし、歌もダンスもモノマネも出来るし、はやりのネタにはすぐに飛びつく。夢のために高校を中退している。努力家。


黒井先生 


夢を追い別の道にたどり着いた大人。主人公たちの担任にして、体育教師。かつてはプロ野球選手になりたいという、平凡だが大きな夢を抱いていた。レギュラーにもなれず夢に破れてからは、応援してくれた監督に感謝し、彼のような教師になりたいと考えた。必死に勉強し、今の立場にある。


スイーツの幻影


紗彩にだけ見える。「夢を諦めて本当にいいの?」「後悔してない?」と、事あるごとに語りかけてくる。

クリームの幻聴


ミユにだけ聞こえる。心の迷いを表しているらしい。

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