33:紗彩ちゃんってば多才!

文字数 766文字

 しばらくして。
紗彩ちゃん。あなたのクラスメートが来てるわよー。
私のクラスメート?

動画観ているんですって。

あら? でもそしたら、ミユのクラスメートでもあるのよね

ミユちゃんは……その……
わかってるわ。友達、少ないんでしょ?
(少ないどころか、私以外いないけど)
こうして話題を作ったり、すぐに人を呼び込める力は、ミユにはないものよね。さすが私の紗彩ちゃんだわ。んもぅ、ハグしちゃう♥♥♥

(ぎゅってされると、豊満な胸で窒息しそうに……)

(でも……。

これが私にあって、ミユちゃんにはないもの……)

そんなわけだから、もしよかったら明日以降もよろしくねん。バイト代弾んじゃうわん
は、はい。考えておきます
ついでに、ママって呼んでも――
呼びません!!

   

         ☆★☆★


 ということがあり。
 翌日学校へ行ってみると。

紗彩さん、動画みたよー!
食レポだけじゃなくって、スイーツ作りもできたんだねー!
あの後食べにいったけど、おいしかったよ!
紗彩ちゃんってば多っ才~~!
ありがとう///
えー? いいなー、私も放課後食べにいこ~~っと

うんうん。

今日もバイトするから、来てよ。またプリンケーキ、作っちゃうよーっ!

(これだよこれ。やっぱり好きなことで認められると、嬉しいなあ)
そうだね。だけど、調子に乗って過信しすぎると、また躓くかもね
(うわっ、またでたな妖怪ケーキめ)
(言われなくても、わかってるよ。そんなことは……)
(私はまだまだミユちゃんには及ばないんだから)
(それでも、嬉しいものは嬉しい。私のケーキで喜んでくれる人がいる。それは本当に、嬉しいことだよ)
紗彩さん
あ、チユキちゃん。どうしたの?
チユキも動画観たよ。今日、食べに行っていい?
もちろん!
なにか食べたいスイーツとかあれば、他にも作っちゃうよ!

あ、もちろんユキさんの許可もらえたらだけどね
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登場人物紹介

夏木紗彩(なつきさあや) 高2


夢を諦めた少女。幼い頃からパティシエールに憧れていたが、幼馴染のミユに実力差を見せつけられ、心が折れた。今はコンビニやお店のスイーツをレポする動画「紗彩チャンネル」を運営。そこそこ人気でお小遣い稼ぎにはなっているが、一方で夢を追うキラキラした人たちに嫉妬していて、いつもどこか不満げ。夢を諦めた瞬間から、スイーツの幻影が見えるように。

春風ミユ 高2


夢を本気で追う少女。紗彩の幼馴染で、実家は人気スイーツ店「ハルカゼ」。幼い頃からパティシエールを目指し修行している。スイーツへの情熱が凄い。一方で、本気で努力せず「できない」と口にする人の気持ちが理解できず、女子とは喧嘩になりやすい。そのため、紗彩以外の友だちがいない

クリームの声が聞こえるらしい。

氷崎マオ 高2


夢を応援できる少女。いつもゲーセンで遊んでばかりの帰宅部。友達も多く、リア充。勉強もちゃんとするし、成績は平均より少し上程度。なんでもそこそこにこなせるけど、特別得意なことがあるわけではなく、夢を持っているわけでもない。だから、学生でありながら好きなことで金を稼ぐ紗彩が羨ましくて、それなのになぜ不満を抱いているのか、理解できずにいる。

冬兎チユキ 高2


夢追い人を尊敬し、夢を持ちたい少女
今が楽しければそれでいいじゃん、という考えで適当に生きている。甘いもの大好き、紗彩の動画もチェックしている。普通の女子高生。ミユには嫌われている。

アーニャ 20歳


夢のために他を犠牲にした女。売れない大道芸人。好きなこと以外はやりたくない。だけど、好きなことのためならなんでもする。様々な芸をこなし、歌もダンスもモノマネも出来るし、はやりのネタにはすぐに飛びつく。夢のために高校を中退している。努力家。


黒井先生 


夢を追い別の道にたどり着いた大人。主人公たちの担任にして、体育教師。かつてはプロ野球選手になりたいという、平凡だが大きな夢を抱いていた。レギュラーにもなれず夢に破れてからは、応援してくれた監督に感謝し、彼のような教師になりたいと考えた。必死に勉強し、今の立場にある。


スイーツの幻影


紗彩にだけ見える。「夢を諦めて本当にいいの?」「後悔してない?」と、事あるごとに語りかけてくる。

クリームの幻聴


ミユにだけ聞こえる。心の迷いを表しているらしい。

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