23:実力の差 ※1/26大幅修正・加筆

文字数 983文字

多くを求めず、誰とでも打ち解ける。そんな余裕のあるアタシは、みんなのことを応援もできる。

サヤサヤのことも、応援してやってるだろ?

ええ?
応援されたかなぁ

おいお~~い。応援されてる自覚なしかよ。ひでぇなぁ。

動画だってよく手伝ってるだろ~?

別にそれは夢ってわけじゃ……
まあなんだっていいけどな。とにかく、アタシな日々を全力で、テキトーに生きる。多くは求めねぇ。けど、充実している。だから、人を応援できる
サヤサヤは、そうじゃねぇ。やりたいことがあって、それがうまくいかなくて、余裕がないから素直に友達の応援もできない

な~んてな。お前はパティシエール、諦めたんだもんな?

ミユミユを応援できるようになったから、動画でサポートしはじめたんだろ?

そ、そう。そうだよ
けど、やっぱりサヤサヤがパティシエールの道に戻りたいと思ったら、アタシは協力する
戻らないよ。やめたんだって、もう……
そんならそれでいいさ。結局、決めるのはお前さ
 マオちゃんは時々核心をつくようなことを言うけど、深くは踏み込まない。そこがマオちゃんのいいところだけど、この時ばかりは、もう少し踏み込んでほしいような気がした。
 踏み込まれて、それでどうなりたいのかはわからないけれど。
痛いところを突かれたね。余裕ができれば、君も人にもっと優しくできる。誰かの夢も応援できる。余裕を作るにはどうするか? パティシエールでの成功――つまり、夢を叶えて満足するしかない
(それは理想だよ。頑張っても夢が叶わなかったら、苦しさと、無駄にした時間だけが残る)
さっきからなんの話ぃ?
なんでもない。チユキちゃんも一緒に、お昼食べよ?
ミユさんはいいの?
あとでフォロー入れとくよ
どうにかして、ミユさんと仲良くなる方法ないかなぁ
本気で夢を追う人間と、そうでない人間には、どうして考えの差は生じるもんだ。それでもうまく付き合っていくのがコミュ力ってもんだが、そのヘン、ミユミユは不器用なんだろうな。どうしてもミユミユと仲良くなって話をしたいんなら、チユチユがあいつを理解してやるしかねえ
う~ん。

わかったような、わからないような……

(マオちゃんは達観しているなぁ)

同じことをいつまでも悩んでいる君とは、大違いだね
(うるさい。食べるぞ)
おっと、撤退撤退
 突然現れた幻影は、突然消えたよ。
(私は結局、どうしたいんだろう……。どうすれば、いいんだろう)
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登場人物紹介

夏木紗彩(なつきさあや) 高2


夢を諦めた少女。幼い頃からパティシエールに憧れていたが、幼馴染のミユに実力差を見せつけられ、心が折れた。今はコンビニやお店のスイーツをレポする動画「紗彩チャンネル」を運営。そこそこ人気でお小遣い稼ぎにはなっているが、一方で夢を追うキラキラした人たちに嫉妬していて、いつもどこか不満げ。夢を諦めた瞬間から、スイーツの幻影が見えるように。

春風ミユ 高2


夢を本気で追う少女。紗彩の幼馴染で、実家は人気スイーツ店「ハルカゼ」。幼い頃からパティシエールを目指し修行している。スイーツへの情熱が凄い。一方で、本気で努力せず「できない」と口にする人の気持ちが理解できず、女子とは喧嘩になりやすい。そのため、紗彩以外の友だちがいない

クリームの声が聞こえるらしい。

氷崎マオ 高2


夢を応援できる少女。いつもゲーセンで遊んでばかりの帰宅部。友達も多く、リア充。勉強もちゃんとするし、成績は平均より少し上程度。なんでもそこそこにこなせるけど、特別得意なことがあるわけではなく、夢を持っているわけでもない。だから、学生でありながら好きなことで金を稼ぐ紗彩が羨ましくて、それなのになぜ不満を抱いているのか、理解できずにいる。

冬兎チユキ 高2


夢追い人を尊敬し、夢を持ちたい少女
今が楽しければそれでいいじゃん、という考えで適当に生きている。甘いもの大好き、紗彩の動画もチェックしている。普通の女子高生。ミユには嫌われている。

アーニャ 20歳


夢のために他を犠牲にした女。売れない大道芸人。好きなこと以外はやりたくない。だけど、好きなことのためならなんでもする。様々な芸をこなし、歌もダンスもモノマネも出来るし、はやりのネタにはすぐに飛びつく。夢のために高校を中退している。努力家。


黒井先生 


夢を追い別の道にたどり着いた大人。主人公たちの担任にして、体育教師。かつてはプロ野球選手になりたいという、平凡だが大きな夢を抱いていた。レギュラーにもなれず夢に破れてからは、応援してくれた監督に感謝し、彼のような教師になりたいと考えた。必死に勉強し、今の立場にある。


スイーツの幻影


紗彩にだけ見える。「夢を諦めて本当にいいの?」「後悔してない?」と、事あるごとに語りかけてくる。

クリームの幻聴


ミユにだけ聞こえる。心の迷いを表しているらしい。

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