01:私にはスイーツの精霊が見える ※1/26大幅修正・加筆

エピソード文字数 1,749文字

(私、夏木紗彩にはスイーツの幻影が見える。精霊を名乗るソレが現れたきっかけは、今から8年前。まだ私が小学3年生だった時のことだよ)

 私の家の隣には、そこそこ繁盛しているスイーツショップが建っているの。ケーキ以外にも、カスタードプリンとか、スイートポテトとか、いろいろ売っているから、ケーキ屋じゃなくて、スイーツショップ。お店の名前は、「ハルカゼ」っていうんだ。

 毎日「ハルカゼ」のスイーツを眺めながら登下校していた私は、あの日、きまぐれでケーキを作りたいと思った。それで、もうひとつのきまぐれでお母さんに食べさせたいって考えたの。


 

 なんか、ケーキつくってお母さんにたべさせてみたい


   ̄ヽ、   _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     `'ー '´
      ○   
       O
        ( ・`ω・´)←私

ケーキを作るの? 面白そうね。私もやるわ
 そう言ったのは、「ハルカゼ」に住む同い年の少女。私が生まれた時から、ずっと幼馴染をやっている春風ミユだよ。
ミユちゃん、スイーツ屋さんのむすめなのに、ケーキつくったことないの?
ないわ。私にとって、お母さんがケーキを作るのは、生まれた頃から見ている日常風景だもの。馴染みすぎて、いまさら影響をうけるものでもないわ
けれど、あなたが作るっていうんなら、私もやろうかしら
そっか。じゃあ、いっしょにおそわろーねっ!
  ぎゅぎゅ~~~っ。
ちょっ、なんで抱きつくのよっ……!

え~~?

ミユちゃんといっしょで、うれしーから?

私と一緒で、嬉しい……?

そ、そう……。なら、いいけど///

えへへ。

ミユちゃん、あったかい

(はわわっ……か、顔が近い~~~///
 小さな頃から、私とミユちゃんは何をするにも一緒だった。遊ぶに行くのも、自転車や水泳など、新しい技術を習得するのも、一緒だった。多くは私からなにかを初めて、ミユちゃんが後を追いかけてくる形だった。そして、私の方がいつも一歩前にいた。


 私はそれを楽しんでいたし、この時も”今までと同じなんだろう”と思っていたよ。

それじゃあ、さっそく「ハルカゼ」でケーキをおそわろう!!
お母さん!

私たち、スイーツ作りをはじめるわ! おしえてちょーだい!

 こうして私とミユちゃんは、ミユちゃんのお母さんからケーキづくりを教わった。作ったのは、生クリームとカラースプレーチョコとマーブルチョコを使っただけの、簡単なやつ。

自分の手で、ケーキを作っちゃった。

なんか、楽しいね

……そうね

 だけど、不器用だったミユちゃんはクリームをスポンジの上に乗せることすらできず、お皿や床を何度も汚した。対して私は、小学3年生がはじめて料理をしたにしては、なかなかの出来のものに仕上げられたと思う。


 その後も練習を重ねて、お母さんの誕生日に、焼いて生クリームを乗せて、文字を書いただけの簡単なショートケーキだったけど、プレゼントしたの。

みてみてお母さん! これ、私がつくったんだよ~~!

あら、すごいわね♪

紗彩は天才かしら

えへへ////

でしょ~?

 なんてはしゃいで、頭をなでてもらったのを覚えているよ。一方で、何度やってもぐちゃぐちゃのケーキしか作れなかったミユちゃんは。
むうぅ……。見ていなさい! いっぱい練習して、ぜったい美味しいケーキ作るんだから!

 と、燃えていた。ミユちゃんは私の後を追いかけて、いろいろなことを真似するけれど、不器用だからいつも途中で諦めちゃう。そして、私が次のことをはじめると、また追いかけてくるんだ。そんな彼女にしては、珍しく本気だったよ。


 それから数ヶ月の間は、学校が休みの日でミユママが忙しくない日に、よくケーキ作りを教わった。ケーキ作りの本も読んだ。自分で甘~い美味しいスイーツを作れるのが楽しくて、いつしか私はこう思うようになっていた。

(スイーツ作りは楽しいし、自分のスイーツで食べた人が笑顔になってくれたら、私も嬉しい。これって、パティシエールの素質なのかも??)
 きっかけは軽いノリだったけど、ちゃんと本気だったし、「ハルカゼ」に通って、あるいは自宅で、真面目に勉強を、努力をした。ミユちゃんと一緒だったのもあってか、本当に楽しかった。
 けれど、小学4年生の春だった。
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登場人物紹介

夏木紗彩(なつきさあや) 高2


夢を諦めた少女。幼い頃からパティシエールに憧れていたが、幼馴染のミユに実力差を見せつけられ、心が折れた。今はコンビニやお店のスイーツをレポする動画「紗彩チャンネル」を運営。そこそこ人気でお小遣い稼ぎにはなっているが、一方で夢を追うキラキラした人たちに嫉妬していて、いつもどこか不満げ。夢を諦めた瞬間から、スイーツの幻影が見えるように。

春風ミユ 高2


夢を本気で追う少女。紗彩の幼馴染で、実家は人気スイーツ店「ハルカゼ」。幼い頃からパティシエールを目指し修行している。スイーツへの情熱が凄い。一方で、本気で努力せず「できない」と口にする人の気持ちが理解できず、女子とは喧嘩になりやすい。そのため、紗彩以外の友だちがいない

クリームの声が聞こえるらしい。

氷崎マオ 高2


夢を応援できる少女。いつもゲーセンで遊んでばかりの帰宅部。友達も多く、リア充。勉強もちゃんとするし、成績は平均より少し上程度。なんでもそこそこにこなせるけど、特別得意なことがあるわけではなく、夢を持っているわけでもない。だから、学生でありながら好きなことで金を稼ぐ紗彩が羨ましくて、それなのになぜ不満を抱いているのか、理解できずにいる。

冬兎チユキ 高2


夢追い人を尊敬し、夢を持ちたい少女
今が楽しければそれでいいじゃん、という考えで適当に生きている。甘いもの大好き、紗彩の動画もチェックしている。普通の女子高生。ミユには嫌われている。

アーニャ 20歳


夢のために他を犠牲にした女。売れない大道芸人。好きなこと以外はやりたくない。だけど、好きなことのためならなんでもする。様々な芸をこなし、歌もダンスもモノマネも出来るし、はやりのネタにはすぐに飛びつく。夢のために高校を中退している。努力家。


黒井先生 


夢を追い別の道にたどり着いた大人。主人公たちの担任にして、体育教師。かつてはプロ野球選手になりたいという、平凡だが大きな夢を抱いていた。レギュラーにもなれず夢に破れてからは、応援してくれた監督に感謝し、彼のような教師になりたいと考えた。必死に勉強し、今の立場にある。


スイーツの幻影


紗彩にだけ見える。「夢を諦めて本当にいいの?」「後悔してない?」と、事あるごとに語りかけてくる。

クリームの幻聴


ミユにだけ聞こえる。心の迷いを表しているらしい。

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