56:楽しいのが一番

文字数 858文字

でも、とにかく、得意なことはコレしかないの。紗彩がスイーツを作り始めると知って、お母さんがパティシエールの私は、これなら紗彩についていけるかもしれない。一緒に頑張れるかもしれない。そう思ったの
それがきっかけね。今では作ったスイーツで誰かを笑顔にしたい。そんな気持ちも、ないわけではないわ
だけど、それ以上に、スイーツしか知らないから。スイーツはもはや、私にとって生活の一部。だからスイーツを作る
そう。やりたいから、作るの。やりたいことでお金を稼ぎたい。それ以外のことは、したくないわ!
まあ、人付き合いとかは苦手なタイプだよね、ミユちゃん
ええ。興味のないことで接客とか、絶対無理だわ
(考えてみると、アーニャさんみたいなタイプなんだよね、ミユちゃんって)
やりたいからやる。それ以外はやりたくない、か。
シンプルだけど、夢を追う理由って、案外そんなものなのかもね。私も同じようなカンジだよ
私にとっても、スイーツやパティシエールは、幼い頃からずっと側にあった世界。私だって、これ以外に得意なことや好きなことはない
YouTuberだって、スイーツを題材にした動画じゃないと、ネタを考えられないしやる気も起きない
私も、好きなことをやって、好きなことで成功し認められたい
私たち、同じね。私たちはパティシエールとして成功しないと、幸せになれない。夢を叶えないとダメなタイプの人間なんだわ
そこが、マオちゃんやチユキちゃんとは違うよね
だからこそ、あの2人は私たちを応援してくれるのだと思うわ
でも、今はちゃんとミユちゃんのことも応援したいって思ってるよ!
私だって紗彩のこと、応援するわ!
うん、ありがとう
とにかく。立派な目標とか、信念とか、そういうのも大事。だけど、一番の理由はシンプルで、感情に正直なものでいい。私はそう思うわ
だから、紗彩。今度やるスイーツパフォーマンス、見てくれる人を楽しませるのはもちろんとして、私たちも目一杯楽しみましょ

やりたいからやるんだもの。楽しまなくっちゃ。

楽しいのが一番。それがどんな理由よりも、力を生むわ

うん!
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登場人物紹介

夏木紗彩(なつきさあや) 高2


夢を諦めた少女。幼い頃からパティシエールに憧れていたが、幼馴染のミユに実力差を見せつけられ、心が折れた。今はコンビニやお店のスイーツをレポする動画「紗彩チャンネル」を運営。そこそこ人気でお小遣い稼ぎにはなっているが、一方で夢を追うキラキラした人たちに嫉妬していて、いつもどこか不満げ。夢を諦めた瞬間から、スイーツの幻影が見えるように。

春風ミユ 高2


夢を本気で追う少女。紗彩の幼馴染で、実家は人気スイーツ店「ハルカゼ」。幼い頃からパティシエールを目指し修行している。スイーツへの情熱が凄い。一方で、本気で努力せず「できない」と口にする人の気持ちが理解できず、女子とは喧嘩になりやすい。そのため、紗彩以外の友だちがいない

クリームの声が聞こえるらしい。

氷崎マオ 高2


夢を応援できる少女。いつもゲーセンで遊んでばかりの帰宅部。友達も多く、リア充。勉強もちゃんとするし、成績は平均より少し上程度。なんでもそこそこにこなせるけど、特別得意なことがあるわけではなく、夢を持っているわけでもない。だから、学生でありながら好きなことで金を稼ぐ紗彩が羨ましくて、それなのになぜ不満を抱いているのか、理解できずにいる。

冬兎チユキ 高2


夢追い人を尊敬し、夢を持ちたい少女
今が楽しければそれでいいじゃん、という考えで適当に生きている。甘いもの大好き、紗彩の動画もチェックしている。普通の女子高生。ミユには嫌われている。

アーニャ 20歳


夢のために他を犠牲にした女。売れない大道芸人。好きなこと以外はやりたくない。だけど、好きなことのためならなんでもする。様々な芸をこなし、歌もダンスもモノマネも出来るし、はやりのネタにはすぐに飛びつく。夢のために高校を中退している。努力家。


黒井先生 


夢を追い別の道にたどり着いた大人。主人公たちの担任にして、体育教師。かつてはプロ野球選手になりたいという、平凡だが大きな夢を抱いていた。レギュラーにもなれず夢に破れてからは、応援してくれた監督に感謝し、彼のような教師になりたいと考えた。必死に勉強し、今の立場にある。


スイーツの幻影


紗彩にだけ見える。「夢を諦めて本当にいいの?」「後悔してない?」と、事あるごとに語りかけてくる。

クリームの幻聴


ミユにだけ聞こえる。心の迷いを表しているらしい。

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