16:続ショートコント

文字数 869文字

まあ、そんなこんなで調理して、サヤサヤが試食して、おわりだ。
どうだミユミユ。参考んなったか?
なったと思う?
 
 ギロリ。鋭い目線。
ならねぇよなぁ
ですよねー
やっぱミユミユがやってみるしかねえだろ。
ほれ、アタシがカメラ回してやっから、こっち立て
 マオちゃんは端で見ていたミユちゃんを引っ張って、作業台の前に立たせたよ。
 それから、私が持ってきた撮影用のカメラを構える。
えっ。
待って、いきなりそんな……
やってみるんだよ。スイーツだって、最初は初心者だったんだろ?
今でも、いろいろ苦労して、試行錯誤しながら作ってるんじゃねえの?
これも同じ。とりあえずやってみんだよ。で、何回も失敗して上達していく
何回も失敗して、上達していく……か。なんか、私に向けて言っているようなセリフだなぁ)
ん? どうしたサヤサヤ?

鳩が手榴弾くらったような顔して

それ死んでるよね!?
なんでもないよ。ただ、普段テキトーに生きてるのに、言うことだけはまともなんだからなぁ、と思って
言うことまでいつもテキトーだったら、友達なくすだろ。
生き方はテキトーでも、やる時はやるし正論も言う。だからアタシは世渡り上手なの
な、なるほど。
だそうです。ユナちゃん、とりあえずやってみよ?
……紗彩が言うなら
おし。じゃ、カメラ回すぞ
えっ、いきなり……?
はい。SAYAでーす。今回は地元のスイーツショップ「ハルカゼ」にお邪魔していま~す。
実は私、ここのパティシエールをしているユキさんの娘・春風ミユちゃんと幼馴染で同級生なんですよ!

えっ?

えっと……その……はい。


そうだと思います

なにが?
ううっ……やっぱり無理よ
 両手で顔を隠しちゃうミユちゃん。
ん~……じゃあ、紹介とかは全部私がやるから、ミユちゃんはとにかくスイーツを作ってて?
私がそれを撮って、なんかうまいこと動画にするよ。それでどう?
……それなら、やれるわ
 ミユちゃんが小さく頷いた。
んなら、アタシは用済みだな。帰るわ
えっ、帰っちゃうの?
 必要ねーだろ、アタシ。それに、こう見えて空気はちゃんと読むんだよ
 マオちゃんは右手を振って、去っていくよ。
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登場人物紹介

夏木紗彩(なつきさあや) 高2


夢を諦めた少女。幼い頃からパティシエールに憧れていたが、幼馴染のミユに実力差を見せつけられ、心が折れた。今はコンビニやお店のスイーツをレポする動画「紗彩チャンネル」を運営。そこそこ人気でお小遣い稼ぎにはなっているが、一方で夢を追うキラキラした人たちに嫉妬していて、いつもどこか不満げ。夢を諦めた瞬間から、スイーツの幻影が見えるように。

春風ミユ 高2


夢を本気で追う少女。紗彩の幼馴染で、実家は人気スイーツ店「ハルカゼ」。幼い頃からパティシエールを目指し修行している。スイーツへの情熱が凄い。一方で、本気で努力せず「できない」と口にする人の気持ちが理解できず、女子とは喧嘩になりやすい。そのため、紗彩以外の友だちがいない

クリームの声が聞こえるらしい。

氷崎マオ 高2


夢を応援できる少女。いつもゲーセンで遊んでばかりの帰宅部。友達も多く、リア充。勉強もちゃんとするし、成績は平均より少し上程度。なんでもそこそこにこなせるけど、特別得意なことがあるわけではなく、夢を持っているわけでもない。だから、学生でありながら好きなことで金を稼ぐ紗彩が羨ましくて、それなのになぜ不満を抱いているのか、理解できずにいる。

冬兎チユキ 高2


夢追い人を尊敬し、夢を持ちたい少女
今が楽しければそれでいいじゃん、という考えで適当に生きている。甘いもの大好き、紗彩の動画もチェックしている。普通の女子高生。ミユには嫌われている。

アーニャ 20歳


夢のために他を犠牲にした女。売れない大道芸人。好きなこと以外はやりたくない。だけど、好きなことのためならなんでもする。様々な芸をこなし、歌もダンスもモノマネも出来るし、はやりのネタにはすぐに飛びつく。夢のために高校を中退している。努力家。


黒井先生 


夢を追い別の道にたどり着いた大人。主人公たちの担任にして、体育教師。かつてはプロ野球選手になりたいという、平凡だが大きな夢を抱いていた。レギュラーにもなれず夢に破れてからは、応援してくれた監督に感謝し、彼のような教師になりたいと考えた。必死に勉強し、今の立場にある。


スイーツの幻影


紗彩にだけ見える。「夢を諦めて本当にいいの?」「後悔してない?」と、事あるごとに語りかけてくる。

クリームの幻聴


ミユにだけ聞こえる。心の迷いを表しているらしい。

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