62:さようなら、スイーツの幻影くん

文字数 885文字

(私、ミユちゃん、アーニャさんは「ハルカゼ」の厨房に集まりイベントの打ち合わせをしたよ)
(アーニャさんは私たち以外ともなにかをするつもりらしくて、楽しみにしてて、と言っていた)

 そして、イベントの前日。

 12月23日。

 夜、自室。

いよいよ明日だ。

緊張するなぁ

(友達に教えたり、ネットで告知したり、宣伝は行った。ユキさんもお店に宣伝のポスターを貼ったし、チユキちゃんも宣伝してくれた)
(まさかイベントがクリスマスイヴになるとは思わなかったけど、どれくらいの人が来てくれるんだろう)
(私たち以外にもいろいろなパフォーマーが集まって、小さなイベンホールを貸し切って行うんだって言ってた)

思いのほか、大きな話になったなぁ。

私たちだけでやる、小さなパフォーマンスだと思っていたのに

会場のキャパ数は1000人らしいね
うん。チケット代のかかるイベントだから、1000人埋まるかどうかはわからないけどね
でも、楽しみだなぁ
 ちなみに有料イベントなので、動画配信の許可が取れたのは自分たちのパフォーマンスだけ。もとより自分たち以外を配信するつもりは、ないけどね。

それは、スイーツを作れるからかい?

好きなことをやれるからかい?

それもある。

あと、ミユちゃんやアーニャさんと、楽しくやれそうだからってのもある

みんなの反応も、緊張するけど楽しみだよ。

もちろん、動画にして投稿した後の反応も楽しみだ

楽しいことを楽しめるようになった。

君は過去の後悔と挫折を乗り越え、立派に成長したようだね

うん。

一度はYouTuberという道に逃げた。夢から逃げた先で出会ったものが、今度は今の夢に繋がっている。それに気づけたから、私は前に進める。それに気づかせてくれたみんなと、前に進みたい

もう絶対に逃げないし、後悔しないよ!
自分たちも、みんなも楽しくなれるようなスイーツ作り。これが私のパティシエール像だから!
ふっ。どうやらもう、本当に僕は必要ないみたいだ。進むといい。君の道、ロード・オブ・スイーツパフォーマー
幻影くん……
さようなら、紗彩

明日は、がんばれ

うん。今まで、ありがとう。

さようなら、スイーツの幻影くん

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登場人物紹介

夏木紗彩(なつきさあや) 高2


夢を諦めた少女。幼い頃からパティシエールに憧れていたが、幼馴染のミユに実力差を見せつけられ、心が折れた。今はコンビニやお店のスイーツをレポする動画「紗彩チャンネル」を運営。そこそこ人気でお小遣い稼ぎにはなっているが、一方で夢を追うキラキラした人たちに嫉妬していて、いつもどこか不満げ。夢を諦めた瞬間から、スイーツの幻影が見えるように。

春風ミユ 高2


夢を本気で追う少女。紗彩の幼馴染で、実家は人気スイーツ店「ハルカゼ」。幼い頃からパティシエールを目指し修行している。スイーツへの情熱が凄い。一方で、本気で努力せず「できない」と口にする人の気持ちが理解できず、女子とは喧嘩になりやすい。そのため、紗彩以外の友だちがいない

クリームの声が聞こえるらしい。

氷崎マオ 高2


夢を応援できる少女。いつもゲーセンで遊んでばかりの帰宅部。友達も多く、リア充。勉強もちゃんとするし、成績は平均より少し上程度。なんでもそこそこにこなせるけど、特別得意なことがあるわけではなく、夢を持っているわけでもない。だから、学生でありながら好きなことで金を稼ぐ紗彩が羨ましくて、それなのになぜ不満を抱いているのか、理解できずにいる。

冬兎チユキ 高2


夢追い人を尊敬し、夢を持ちたい少女
今が楽しければそれでいいじゃん、という考えで適当に生きている。甘いもの大好き、紗彩の動画もチェックしている。普通の女子高生。ミユには嫌われている。

アーニャ 20歳


夢のために他を犠牲にした女。売れない大道芸人。好きなこと以外はやりたくない。だけど、好きなことのためならなんでもする。様々な芸をこなし、歌もダンスもモノマネも出来るし、はやりのネタにはすぐに飛びつく。夢のために高校を中退している。努力家。


黒井先生 


夢を追い別の道にたどり着いた大人。主人公たちの担任にして、体育教師。かつてはプロ野球選手になりたいという、平凡だが大きな夢を抱いていた。レギュラーにもなれず夢に破れてからは、応援してくれた監督に感謝し、彼のような教師になりたいと考えた。必死に勉強し、今の立場にある。


スイーツの幻影


紗彩にだけ見える。「夢を諦めて本当にいいの?」「後悔してない?」と、事あるごとに語りかけてくる。

クリームの幻聴


ミユにだけ聞こえる。心の迷いを表しているらしい。

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