49:黒井センセに聞いてもらえって

文字数 566文字

 翌日。週末明けの学校。
前から話してあった通り、今週から進路調査面談をやっていきますよ
し、進路調査!?
夏木さん。先生は前からちゃーんと話していましたよ。聞いてなかったんですか?
うぐっ
(自分のことばかり考えて、先生の話ろくに聞いてなかった!)
夏木さん、あなたは今日ですよ
ええっ! いきなり!?
事前に放課後の予定は聞きましたよ。
用事があるんなら、明日以降に回してもいいですが、どうします?
ちょうどいい機会じゃねーか。
全部ゲロっちまえよ
ゲロるってなにを!?
お、なんです夏木さん。罪の告白ですか?
カツ丼、用意しましょうか?
えっ、本当に用意してくれるの?
コンビニのでよければ買ってきますよ。料金はあとで払ってくれれば
なんだぁ、奢ってくれるわけじゃないんだ
そりゃそうです。あなたに奢ったら、全員に奢らないといけなくなります。コンビニメシとはいえ、クラス全員分奢るのはキツイですからね
マジレスされた!
サヤサヤ。オマエ、まだ夢を追うこと、不安なんだろ。せっかくなんだし、黒井センセに聞いてもらえって
夢の相談ですか?
そういうのなら、無料で引き受けますよ
あ、じゃあ……お願いします
(たしかに、先生ならいろいろな生徒を見ているだろうし、話を聞いてもらってもいいかも)
よーし。
それじゃあ、今日面談するのは氷崎さん、冬兎さん、春風さん、夏木さん、それから――
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登場人物紹介

夏木紗彩(なつきさあや) 高2


夢を諦めた少女。幼い頃からパティシエールに憧れていたが、幼馴染のミユに実力差を見せつけられ、心が折れた。今はコンビニやお店のスイーツをレポする動画「紗彩チャンネル」を運営。そこそこ人気でお小遣い稼ぎにはなっているが、一方で夢を追うキラキラした人たちに嫉妬していて、いつもどこか不満げ。夢を諦めた瞬間から、スイーツの幻影が見えるように。

春風ミユ 高2


夢を本気で追う少女。紗彩の幼馴染で、実家は人気スイーツ店「ハルカゼ」。幼い頃からパティシエールを目指し修行している。スイーツへの情熱が凄い。一方で、本気で努力せず「できない」と口にする人の気持ちが理解できず、女子とは喧嘩になりやすい。そのため、紗彩以外の友だちがいない

クリームの声が聞こえるらしい。

氷崎マオ 高2


夢を応援できる少女。いつもゲーセンで遊んでばかりの帰宅部。友達も多く、リア充。勉強もちゃんとするし、成績は平均より少し上程度。なんでもそこそこにこなせるけど、特別得意なことがあるわけではなく、夢を持っているわけでもない。だから、学生でありながら好きなことで金を稼ぐ紗彩が羨ましくて、それなのになぜ不満を抱いているのか、理解できずにいる。

冬兎チユキ 高2


夢追い人を尊敬し、夢を持ちたい少女
今が楽しければそれでいいじゃん、という考えで適当に生きている。甘いもの大好き、紗彩の動画もチェックしている。普通の女子高生。ミユには嫌われている。

アーニャ 20歳


夢のために他を犠牲にした女。売れない大道芸人。好きなこと以外はやりたくない。だけど、好きなことのためならなんでもする。様々な芸をこなし、歌もダンスもモノマネも出来るし、はやりのネタにはすぐに飛びつく。夢のために高校を中退している。努力家。


黒井先生 


夢を追い別の道にたどり着いた大人。主人公たちの担任にして、体育教師。かつてはプロ野球選手になりたいという、平凡だが大きな夢を抱いていた。レギュラーにもなれず夢に破れてからは、応援してくれた監督に感謝し、彼のような教師になりたいと考えた。必死に勉強し、今の立場にある。


スイーツの幻影


紗彩にだけ見える。「夢を諦めて本当にいいの?」「後悔してない?」と、事あるごとに語りかけてくる。

クリームの幻聴


ミユにだけ聞こえる。心の迷いを表しているらしい。

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