34:この私が……ぐあああああ……

文字数 541文字

(紗彩、楽しそう。なにかしら。紗彩がスイーツ作りを再開してほしくて、行動を起こしたのに)
(いざ紗彩がスイーツを作り始めたら、モヤモヤするわ)
だから言ったじゃないか。
君にはパティシエールの道と幼馴染、どちらも取るなんて器用な生き方はできない、と
(ついにクリームのないところでも、声が……幻覚まで出てきたわね)
君は嫉妬しているのさ
(嫉妬……?)
君はよく知りもしない人に、褒められることを嫌う。努力していないくせに知った風な口で凄い凄い言う人を、嫌う
だけど、紗彩はそうじゃない。褒められれば素直に喜ぶし、凄いと言われればやっぱり素直に喜ぶ
人生、楽しいのはどっちかな?
考えるまでもない。素直に喜べる人間の方だ
それが出来る彼女に、君は嫉妬している。そうさ、君は気づいているんだ。自分の性格がこのままではいけないことに。


そして同時に、恐れてもいる。このまま紗彩が自分から離れていくこと

(そんな……こと……)
恐れることを強いられているんだ!!
……

と、とにっかく! 君は変わらない。今更性格を変えようなんて無理さ。

だから諦めて――

なあ、ミユミユ

なにっ!?

この私が……ぐあああああ……


(´・ω:;.:… サラサラ
!?
(クリームの幻が、かき消された!?)
お、おお。
そんなに驚くとは。すまん
い、いえ……
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登場人物紹介

夏木紗彩(なつきさあや) 高2


夢を諦めた少女。幼い頃からパティシエールに憧れていたが、幼馴染のミユに実力差を見せつけられ、心が折れた。今はコンビニやお店のスイーツをレポする動画「紗彩チャンネル」を運営。そこそこ人気でお小遣い稼ぎにはなっているが、一方で夢を追うキラキラした人たちに嫉妬していて、いつもどこか不満げ。夢を諦めた瞬間から、スイーツの幻影が見えるように。

春風ミユ 高2


夢を本気で追う少女。紗彩の幼馴染で、実家は人気スイーツ店「ハルカゼ」。幼い頃からパティシエールを目指し修行している。スイーツへの情熱が凄い。一方で、本気で努力せず「できない」と口にする人の気持ちが理解できず、女子とは喧嘩になりやすい。そのため、紗彩以外の友だちがいない

クリームの声が聞こえるらしい。

氷崎マオ 高2


夢を応援できる少女。いつもゲーセンで遊んでばかりの帰宅部。友達も多く、リア充。勉強もちゃんとするし、成績は平均より少し上程度。なんでもそこそこにこなせるけど、特別得意なことがあるわけではなく、夢を持っているわけでもない。だから、学生でありながら好きなことで金を稼ぐ紗彩が羨ましくて、それなのになぜ不満を抱いているのか、理解できずにいる。

冬兎チユキ 高2


夢追い人を尊敬し、夢を持ちたい少女
今が楽しければそれでいいじゃん、という考えで適当に生きている。甘いもの大好き、紗彩の動画もチェックしている。普通の女子高生。ミユには嫌われている。

アーニャ 20歳


夢のために他を犠牲にした女。売れない大道芸人。好きなこと以外はやりたくない。だけど、好きなことのためならなんでもする。様々な芸をこなし、歌もダンスもモノマネも出来るし、はやりのネタにはすぐに飛びつく。夢のために高校を中退している。努力家。


黒井先生 


夢を追い別の道にたどり着いた大人。主人公たちの担任にして、体育教師。かつてはプロ野球選手になりたいという、平凡だが大きな夢を抱いていた。レギュラーにもなれず夢に破れてからは、応援してくれた監督に感謝し、彼のような教師になりたいと考えた。必死に勉強し、今の立場にある。


スイーツの幻影


紗彩にだけ見える。「夢を諦めて本当にいいの?」「後悔してない?」と、事あるごとに語りかけてくる。

クリームの幻聴


ミユにだけ聞こえる。心の迷いを表しているらしい。

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