18:一緒にいたいもの

文字数 847文字

私は置いていかないわ。だって、私はずっと紗彩と作りたかった
今でも、気持ちは変わらないわ。だから、もう一度私と……
でも、ごめん。
やっぱり、辛いんだ
 ミユちゃんと一緒にスイーツを作って、開いてしまった実力差を、改めて直感するのが。
……そう
ごめん
おいおーい。
ここまで喋ったのに、これで終わり?
あと一歩でしょ。スイーツ作りを再開して、また頑張るだけでしょ
じゃあいつ頑張るの?

今でしょ!!

(だから、それができれば苦労はしないんだって。
いいの。諦めたのは、本当なんだから。そこに未練はない。
ただ、ミユちゃんとギクシャクしたままなのが、嫌だっただけ)
はあ~~~~。
けーーーーーっきょく、自分に嘘ついて逃げるんだね
……
ミユちゃん……
いいわ。
動画、撮りましょ
……うん
それと、あの人……氷崎さんとも、これからは話すようにするわ
いや、無理しなくていいよ?
そうもいかないわ。あなたはあの人と仲がいいのでしょ?
また昔みたいに、紗彩と学校でも一緒にいたいもの
けど、大丈夫?

さっきはああ言ったけど、あの人のこと、嫌いではないわ
そうなの?
苦手ではあるけどね
やっぱり?
でも、あの人は私のことをただ凄いとは言わなかった。努力をした結果の今があって、しかもまだまだ先があるんだってことを、ちゃんとわかってくれていた。
だから、ムカつきはしなかった

そっか。じゃあ、チユキちゃんは?
無理。あの人は嫌い
なんでそんなに嫌うの?
別に、悪い人じゃないよ?
私はまだまだなの。自分で、それを自覚している。
それなのに、アホみたいに凄い凄いって褒められると、馬鹿にされているように感じるの
純粋に、凄いと思ってくれているんだと思うよ?
受け取る側の問題よ。あの人がどう思っているかは関係ないの。
私が、そう受け取るの
それに、ベストを尽くさずに「できない」「わからない」とか言う人が嫌いなの。やったこともないくせに、私には出来ないことをするあなたが凄い? 腹立つわ!
(ベストを尽くさずに……か)
……わかった。
じゃあ、マオちゃんとだけは仲良くやっていこうね?
ええ
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登場人物紹介

夏木紗彩(なつきさあや) 高2


夢を諦めた少女。幼い頃からパティシエールに憧れていたが、幼馴染のミユに実力差を見せつけられ、心が折れた。今はコンビニやお店のスイーツをレポする動画「紗彩チャンネル」を運営。そこそこ人気でお小遣い稼ぎにはなっているが、一方で夢を追うキラキラした人たちに嫉妬していて、いつもどこか不満げ。夢を諦めた瞬間から、スイーツの幻影が見えるように。

春風ミユ 高2


夢を本気で追う少女。紗彩の幼馴染で、実家は人気スイーツ店「ハルカゼ」。幼い頃からパティシエールを目指し修行している。スイーツへの情熱が凄い。一方で、本気で努力せず「できない」と口にする人の気持ちが理解できず、女子とは喧嘩になりやすい。そのため、紗彩以外の友だちがいない

クリームの声が聞こえるらしい。

氷崎マオ 高2


夢を応援できる少女。いつもゲーセンで遊んでばかりの帰宅部。友達も多く、リア充。勉強もちゃんとするし、成績は平均より少し上程度。なんでもそこそこにこなせるけど、特別得意なことがあるわけではなく、夢を持っているわけでもない。だから、学生でありながら好きなことで金を稼ぐ紗彩が羨ましくて、それなのになぜ不満を抱いているのか、理解できずにいる。

冬兎チユキ 高2


夢追い人を尊敬し、夢を持ちたい少女
今が楽しければそれでいいじゃん、という考えで適当に生きている。甘いもの大好き、紗彩の動画もチェックしている。普通の女子高生。ミユには嫌われている。

アーニャ 20歳


夢のために他を犠牲にした女。売れない大道芸人。好きなこと以外はやりたくない。だけど、好きなことのためならなんでもする。様々な芸をこなし、歌もダンスもモノマネも出来るし、はやりのネタにはすぐに飛びつく。夢のために高校を中退している。努力家。


黒井先生 


夢を追い別の道にたどり着いた大人。主人公たちの担任にして、体育教師。かつてはプロ野球選手になりたいという、平凡だが大きな夢を抱いていた。レギュラーにもなれず夢に破れてからは、応援してくれた監督に感謝し、彼のような教師になりたいと考えた。必死に勉強し、今の立場にある。


スイーツの幻影


紗彩にだけ見える。「夢を諦めて本当にいいの?」「後悔してない?」と、事あるごとに語りかけてくる。

クリームの幻聴


ミユにだけ聞こえる。心の迷いを表しているらしい。

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