サイキョウさんとリリムちゃん、お別れをする

文字数 700文字

 サイキョウさんの方からリリムちゃんに触れてくることは――折檻をする場合や助ける場合を別にすればですが――殆どありませんでした。

 ましてや撫でるなんていう行為は、初めてのことです。

(……ただまぁ、悪い気はしないかな。ちょっとヘタだけど)
 リリムちゃんがそんなことを考えながら、サイキョウさんのするがままに任せていると。しばらく撫で続けた後で、サイキョウさんは撫でる手の動きを止めてから口を開きました。

 まぁ道中も割と面倒事が多かったが。

 暇潰しとしては悪くなかったぞ。

 ……これから先は、おまえさんの判断で好きに動くといい。
 ……好きにって、どういう意味?
 文字通りの意味さ。やりたいことをやればいい。

 この屋敷は今やもう、おまえさんの国みたいなもんだ。

 ここの連中に金を用意してもらって国に帰るもよし。

 このままここで暮らし続けるのもよし。好きにしたらいい。

 サイキョウさんはそう言うと、リリムちゃんの頭から手を離します。
 そして続く動きでリリムちゃんから距離を取るように一歩下がり、
 精々達者で暮らせ、ちいひめちゃんよ。

 俺はもう帰るからよ。ここでお別れだ。

 そう言いながら小さく笑った後で、
 ――ああ、そうだ。最後にひとつだけ忠告をしておこう。

 あのみっともなさは、他の人間には見せないように注意しておけ。

 俺は嫌いじゃないが、普通の神経してたらドン引きされるぞ。

 ……あなた以外にあんな姿を見せるわけないじゃない。
 ――かは、いい返事だ。悪くねえ。

 じゃあな、リリム・サンドリム。

 縁があればまた会うこともあるだろう。

 リリムちゃんとそんなやり取りをしてから、その場から忽然と姿を消しました。
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登場人物紹介

サイキョウさん。主人公。

得意なこと:体を使うこと全般
苦手なこと:異性や子どもとのコミュニケーション

一般的な常識を理解した上で、暴力という解決方法を採ることが多かったりする人。悪人でも善人でもない、俺ルールの行使者。

リリムちゃん。小さい姫さん。略してちいひめちゃん。
得意なこと:虚勢を張ること
苦手なこと:体を使うこと

トラブルメーカーそのいち。
遊興すれば襲われる、街を歩けば攫われるといいことなし。
サイキョウさんの理不尽な扱いにもそろそろ慣れてきた。

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