サイキョウさんとリリムちゃん、旅に出る 4
文字数 1,442文字
サイキョウさんが持ってきた料理が皿の上から無くなった頃に、リリムちゃんがぽつりと呟くように言いました。
サイキョウさんはそんなことをのたまったリリムちゃんを半目で見つめます。
そして、しばらく悩むように中空を見つめた後で、
そんな言葉と共にリリムちゃんの脳天に割と勢いよくチョップを入れました。
痛みよりもむしろ驚きのほうで涙目になりながら、リリムちゃんは頭を抱えつつ抗議します。
しかし、サイキョウさんは気にも留めず――むしろ更に機嫌が悪くなったかのように顔をしかめて、リリムちゃんの頭をがっしりと掴みました。
どうやらそのまま力を入れているようです。
痛みに悶絶しながらも、リリムちゃんは必死にサイキョウさんの手から逃れようともがきますが、サイキョウさんの手はぴくりとも緩む気配がありません。
そういって、サイキョウさんはリリムちゃんの頭から手を離しました。
リリムちゃんは解放されたものの、頭部に残る痛みに、思わず頭を抱えながら悶えます。
リリムちゃんはそんなことを考えるものの、口には出しません。出したらまた折檻されると思ったからです。
とは言え、目は口ほどにものを言うという言葉がある通り、リリムちゃんがサイキョウさんを見る目は大変恨みがましく、思っていることを全然隠せていませんでしたが。
サイキョウさんはリリムちゃんの顔をしばらく無言で眺めていましたが、やれやれと溜息を吐きながらそう言うと席を立ちます。
リリムちゃんは再び折檻を受けずに済んだことによほど安心したのか、脱力して椅子の背もたれに思わず体を預けてしまいました。
サイキョウさんは釘を刺すようにそう言うと、部屋を出て行きました。