サイキョウさんとリリムちゃん、最後の騒動を終わらせる 3
文字数 1,049文字
リリムちゃんは思ったことを口にはしませんでしたが、表情を取り繕うところまで気が回らなかったようで。
何か言ってやりたいと思っているけどそれを我慢していることが簡単にわかる――何とも言えない表情でサイキョウさんを見つめていました。
サイキョウさんはそんなリリムちゃんの顔を見て、いやなものを見たという表情を浮かべてから言います。
サイキョウさんの指摘に、リリムちゃんはカエルが潰されたような声を出して驚いた後で、自分の顔をぺたぺたと触ります。
とは言え、鏡もない状況で自分がどんな表情を浮かべているかなど、触ったところで確認しようがありません。
しばらく手を動かし続けてから、それが不毛な行動であると理解したリリムちゃんは、咳払いをひとつ挟んでから言います。
……べ、別にそんな顔をしていたつもりはないけれど。
ただ、そうね。
そう、もし本当にあなたからそう見えていたとすればだけどね?
それは、言いたいことがあるんじゃなくて、教えて欲しいことがあるからよ、たぶん。
サイキョウさんにそんなことを言われて、リリムちゃんは再び濁った驚きの声をあげました。
それはそうです。だって、今のリリムちゃんには聞きたいことがあるのではなく、言いたいことがあるだけだったのですから。
口からでまかせで切り抜けられない場面もあるものです。
リリムちゃんはしばらく何を言おうか迷うように黙り込んでいましたが――やがて何か思いついたのか、そのことに満足していることがわかる嬉々とした表情を浮かべながら口を開きました。
散々時間をかけて出てきた言葉がそれだったことに、サイキョウさんはげんなりしたような表情を浮かべて、
そんな風に言葉を続けようとしたのですが、それを止めるように割って入る声がありました。
それは、絶賛放置されている刺客が目の前にしている状況に耐え切れずに思わずあげてしまった声でした。