サイキョウさんとリリムちゃん、この街での過ごし方について話をする
文字数 1,641文字
サイキョウさんとリリムちゃんが今日の宿を見つけることができたのは、日も落ちてしばらく経った頃のことでした。
宿で部屋をとって、そのまま宿屋の食事処で夕食を摂るサイキョウさんとリリムちゃん。
夕食を一緒に食べながら、サイキョウさんからかけられた言葉に、リリムちゃんは若干悔しそうな表情を浮かべながらそう言いました。
宿を見つけるのに時間がかかったのは、リリムちゃんが選り好みをしたせいなので、強く文句を言うことができなかったのです。
リリムちゃんは王族であり、女の子です。
当然、今までの生活で用意されたものは上等なものばかりで。だから、設備の要求基準が普通の人より上になってしまうのは当然と言えば当然のことでもあります。
要はリリムちゃんのお眼鏡にかなう宿屋がなかなか見つからなかったという話です。
単なる生存確認ってやつだよ。
ま、ちいひめちゃんは現在進行形でトラブルに巻き込まれているわけだが、四六時中一緒に居るというのも息が詰まるだろう?
そこだけ守れば、あとは自由に行動したらいい。
一日中宿屋に篭るもよし、街中を見て回るもよし。
ついてきて欲しいなら声をかけてくれりゃあそれでいい。
そういう時間を作っておこうと、そういう話さ。
朝に姿が見えなければ部屋に行けばいいし。
夜に姿が見えなければ、そりゃ多少探せば済む話でな。
俺がやりたいのは、そういう線引きの方だ。
意思疎通に関しては、最悪、宿屋の人間に言伝を頼んでいればそれでいいんだ。きっちり顔をつきあわせて会話をしなきゃならんわけでもないんだから。
サイキョウさんの言葉を聞いて、リリムちゃんは少し考えるような間を置いた後で、納得したように頷きを返します。
そう、と頷いてから、リリムちゃんは席を立ちました。
小さく笑って言うサイキョウさんに、リリムちゃんは不満げな表情と視線を向けましたが、
そう考えながら自分を落ち着けた後で、テーブルを離れるように歩き出しました。
サイキョウさんは離れていくリリムちゃんの背中を見ながら、溜息を吐きます。
考えても仕方ないかと、サイキョウさんは思考を中断すると、近くの店員に酒の追加注文をしてから、残っていた酒を一息に飲み干しました。