サイキョウさんとリリムちゃん、旅に出る 3
文字数 1,278文字
出来たての料理を持ってリリムちゃんの居る部屋に向かったサイキョウさん。
ノックをしても反応がないことに、もしや、と思って持っていた鍵で扉を開けて中に入ってみれば、リリムちゃんは案の定ベッドの上で眠りこけていました。
サイキョウさんはそう言ってリリムちゃんの眠っているベッドの足を思い切り蹴り飛ばします。
いきなりベッドが大きく揺れたので、驚きで声をあげながら飛び起きるリリムちゃん。混乱した様子で四方八方に視線をやった後で、サイキョウさんの姿を認めると、事態を理解して声をあげます。
相変わらずの物言いに、リリムちゃんは言葉がもう出ません。憤りを晴らすようにベッドをばふばふ叩きます。
サイキョウさんはリリムちゃんのそんな行動を面倒くさそうに眺めた後で、そんなことを言うと、料理を持ってベッドから離れていきます。
リリムちゃんはそんなサイキョウさんの行動も気に入らなかったようですが――出来たての料理のいい匂いと自身の感じる空腹に根負けしたのか、やがてベッドを叩くのを止めると、大人しくベッドから起き上がってテーブルへと向かいます。
サイキョウさんはリリムちゃんがテーブルに着くのを待つこともなく、先に口をつけてそんなことを言いながら意地悪く笑います。
リリムちゃんはサイキョウさんの物言いにむっとした表情を作ったものの、何かを言うことはありませんでした。
サイキョウさんはこういう人間なのだと、既に諦め始めているのかもしれません。
リリムちゃんは無言でサイキョウさんの対面に座ると、目の前の料理に手を伸ばしました。
そして一口、料理を食べると。
心の中で強くそう思いながら、さらに一口、一口と料理を食べ進めて行きます。
何かを話すでもなく夢中になって食べ続けるリリムちゃんを、サイキョウさんは小さく笑いながら眺めます。
ただ、リリムちゃんは食べるのに夢中になりすぎていて、話を出来る状態ではなさそうです。
サイキョウさんはそう考えてから、自分の分を食べつくされては敵わんなと思い直して、リリムちゃんに食べつくされる前に自分の分を確保するべく料理に手を伸ばし始めました。