サイキョウさんとリリムちゃん、次の町に到着する

文字数 794文字

 なんだかんだとあったものの、なんとか旅支度を済ませたサイキョウさんとリリムちゃんは街と街の間を往復する定期便に乗って次の街へと向かいました。
 とは言え、一日や二日の道程ではありませんので、それなりに旅は辛いものです。
 ……こんなに旅が辛いなんて知らなかった。
 特に王族としてぬくぬく生活をしていたリリムちゃんにとっては、普通の馬車での旅は相当辛かったようで。街に到着する頃になると全身から疲れが滲み出ていました。
 お尻が痛い……。
 軟弱だねぇ。
 女の子ってのはデリケートなんですぅ。
 ……同乗していた同い年の子は平気そうに見えたんだがな。
 うぐ。……き、気のせいじゃないかしら。
 まぁそういうことにしておいてやろう。
 ……さて、まずは宿の確保だな。
 ……ねぇ、次の街にはすぐ出発するの?
 そりゃあ、ちいひめちゃん次第だろ。
 自分の懐事情と相談して滞在日時は決めればいい。
 俺は特に急いでないしな。
 ……せめて、二三日はゆっくりしたいんだけど。
 だから、好きにしろって。
 ただな、トラブルには巻き込まれないように注意しとけ。
 すぐに足を用意することはできないんだ。
 最悪歩くことになるぞ。準備不足の状態で。
 リリムちゃんは今回の移動よりも悲惨な状況を想像して、ぶるりと体を震わせます。そして、サイキョウさんの言葉に何度も無言で頷きました。
 ……ええ、気をつけるわ。
 今回よりも辛いのは、私には耐えられそうもないから。
 ああ、そうしろ。
 それじゃ、さっさと移動するぜ。宿屋の部屋数も有限だ。
 早く行かないと、ちいひめちゃんが満足するレベルの場所は埋まっちまうよ。
 サイキョウさんはそう言って、早々に歩き出しました。
 わかってるわよ。歩けばいいんでしょう、歩けば。
 リリムちゃんもそう言って溜息を吐くと、重たい足を頑張って動かして、サイキョウさんの後を追うように宿屋に向かって歩き始めました。
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登場人物紹介

サイキョウさん。主人公。

得意なこと:体を使うこと全般
苦手なこと:異性や子どもとのコミュニケーション

一般的な常識を理解した上で、暴力という解決方法を採ることが多かったりする人。悪人でも善人でもない、俺ルールの行使者。

リリムちゃん。小さい姫さん。略してちいひめちゃん。
得意なこと:虚勢を張ること
苦手なこと:体を使うこと

トラブルメーカーそのいち。
遊興すれば襲われる、街を歩けば攫われるといいことなし。
サイキョウさんの理不尽な扱いにもそろそろ慣れてきた。

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