サイキョウさんとリリムちゃん、最後の騒動を終わらせる 5

文字数 1,160文字

 サイキョウさんの呟きは結構小さな声だったのですが、流石に傍に居るリリムちゃんに届かないはずもなく。
 ――人が決めたところに何でわざわざ茶々を入れてくるの!?
 リリムちゃんは刺客からサイキョウさんへと視線を移して、不満げに頬を膨らませながら怒鳴り声でそんな言葉を口にしました。
 サイキョウさんはリリムちゃんの言葉に何とも表現しがたい表情を浮かべた後で、少しだけ考えるような間を置いてから口を開きます。
 ……あのなぁ。

 確かにちいひめちゃんの言ってることは正しいんだがよ。

 この状況を作ってるのは俺であって、お前じゃないんだぜ。

 ……うぐっ。

 お前がやってるのは正に虎の威を借る狐――つまりは他人の成果をまるで自分のもののように主張してるっていう、ある意味では他人からの評価が著しく下がりうる行為なわけだけど。

 そこんところは認識できてるか?

 ……っ。
 サイキョウさんの言葉に、リリムちゃんは押し黙って視線を地面に下げました。
 その様子を見て、刺客の表情が語ります。
(――そうだそうだ、もっと言ってやれ!)
 サイキョウさんはそんな刺客の表情を見て、それはそれでどうなのよお前と思わなくもありませんでしたが、溜め息を返すだけに留めて視線をリリムちゃんに戻します。
(……さて、どうなるかね)
 サイキョウさんは黙って俯くリリムちゃんを見ながら考えます。
(さっきまでの発言は、個人的には見てて面白かったんでどうとも思っていないんだが。

 一般的にはそうだぞと指摘されて、どういう反応をするのかは見ておきたいところではある。

 今後の対応をどうするか、それに影響する部分だからなぁ。

 とは言え――)

 サイキョウさんはそのまま、リリムちゃんの様子を観察するように眺めていましたが。

 リリムちゃんはサイキョウさんから指摘を受けた後、黙ったまま俯いて、ぷるぷると震えているだけでした。
(――これじゃあ期待できそうもないか)
 そしてサイキョウさんがそんな風に結論づけて、内心で吐息を吐いてから口を開こうとしたときのことです。
 ――いのよ。
 傍に居るサイキョウさんですら聞き取れないほど小さな声で、リリムちゃんが何かを口にしました。
 その声は本当に小さくて、普通だったら発言したことにすら気付けないくらいのものでしたが。
 サイキョウさんはかろうじて、リリムちゃんが何かを言おうとしていることには気付けたので、
 ……? 何だ、何か言ったか?
 怪訝そうに表情を歪めながら、リリムちゃんにそんな言葉を投げかけました。
 サイキョウさんからの問いかけを受けて、しばらくの間は反応がありませんでしたが。

 やがて、リリムちゃんはぴたりと身体の震えを止めると、

 意を決するように拳を握り、顔を上げて、口を開きます。

 ――それの何が悪いのよって、そう言ったんだよ!
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登場人物紹介

サイキョウさん。主人公。

得意なこと:体を使うこと全般
苦手なこと:異性や子どもとのコミュニケーション

一般的な常識を理解した上で、暴力という解決方法を採ることが多かったりする人。悪人でも善人でもない、俺ルールの行使者。

リリムちゃん。小さい姫さん。略してちいひめちゃん。
得意なこと:虚勢を張ること
苦手なこと:体を使うこと

トラブルメーカーそのいち。
遊興すれば襲われる、街を歩けば攫われるといいことなし。
サイキョウさんの理不尽な扱いにもそろそろ慣れてきた。

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