サイキョウさんとリリムちゃん、最後の騒動を終わらせる 8

文字数 589文字

 サイキョウさんの手から解放されたリリムちゃんが、未だに痛む頭を抱えてしゃがみこんでいるのをちらっと見た後で。

 サイキョウさんは刺客のほうに視線を移してから言います。

 ……さて、そっちにはまだやりあう気力は残ってるのかね?
 サイキョウさんの問いかけに、刺客は小さく笑った後で武器を放り投げてから両手をあげてみせました。
 ……いいや、からっきし無いよ。

 正直このまま逃げたいくらいなんだけどね。

 許すと思うか?
 サイキョウさんの言葉に、刺客は肩を竦めてから応じます。
 いんや、そんなことが出来るなんて微塵も思ってないさ。

 ……まぁ正直なところを言えば。

 未だにあんたがそんなに強い人間には見えないんだけどね。

 そう判断できる賢さがあるのはいいが――一言多いな。
 刺客の発した言葉を聞いて、サイキョウさんの声音が一段低くなりました。

 その声を聞いて、自分の失態に気付いた刺客が慌てて引きつったような笑みを浮かべながら口を開きます。

 ……わ、悪い。以後気をつけるから、勘弁してくれ。
 ……ああ、是非そうしろ。

 今後のおまえにとって、最も重要な技能は気配りだ。忘れるなよ。

 サイキョウさんから返ってきた言葉、その内容に、刺客はどういう意味かを問い質そうと口を開きかけましたが。
 ――そろそろ出番だ。出てこい。
 サイキョウさんがそう呟いた直後に現れた存在を見て、開きかけた口を閉じました。
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登場人物紹介

サイキョウさん。主人公。

得意なこと:体を使うこと全般
苦手なこと:異性や子どもとのコミュニケーション

一般的な常識を理解した上で、暴力という解決方法を採ることが多かったりする人。悪人でも善人でもない、俺ルールの行使者。

リリムちゃん。小さい姫さん。略してちいひめちゃん。
得意なこと:虚勢を張ること
苦手なこと:体を使うこと

トラブルメーカーそのいち。
遊興すれば襲われる、街を歩けば攫われるといいことなし。
サイキョウさんの理不尽な扱いにもそろそろ慣れてきた。

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