サイキョウさん、新しい住居で夜を過ごす 1

文字数 478文字

 リリムちゃんが刺客の人に命令を出して眠りについた一方で。

 リリムちゃんの前から姿を消したサイキョウさんは何をしていたかと言うと。
 ――へぇ、悪くない場所じゃないか。

 毎度のことながら、あれはいい仕事をしてくれるもんだ。

 リリムちゃんの居る街からいくつも国をまたいだ遠くの土地にある真新しい家の前に立って、そんな言葉を呟いていました。
 サイキョウさんが言うあれとは、サイキョウさんとリリムちゃんが出会った翌日に、宿屋の部屋に現れた異形のことであり。

 それが果たした仕事というのは、その時に異形が口にしていた――今まさにサイキョウさんが眺めている新しい家を用意することでした。

(まぁ、ふたつめの街に着く前には確保できたって話は来てたんだけど。

 ……確認が遅くなって機嫌を悪くしていないといいんだがな)

 一息。

 サイキョウさんは、人の形から全くと言っていいほど遠い姿をしている割に、妙に人間臭く面倒な性格をしている相手のことを考えてから溜め息を吐くと。

(……とりあえず早めに連絡を入れるようにはしておこう)
 そんな風に結論づけてから、新しい家の扉を開きました。
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登場人物紹介

サイキョウさん。主人公。

得意なこと:体を使うこと全般
苦手なこと:異性や子どもとのコミュニケーション

一般的な常識を理解した上で、暴力という解決方法を採ることが多かったりする人。悪人でも善人でもない、俺ルールの行使者。

リリムちゃん。小さい姫さん。略してちいひめちゃん。
得意なこと:虚勢を張ること
苦手なこと:体を使うこと

トラブルメーカーそのいち。
遊興すれば襲われる、街を歩けば攫われるといいことなし。
サイキョウさんの理不尽な扱いにもそろそろ慣れてきた。

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