サイキョウさんとリリムちゃん、目的地のある街に到着する
文字数 2,266文字
定期便に揺られながら数日を過ごして。
特にトラブルが起こることもなく、サイキョウさんとリリムちゃんは次の街に到着しました。
とは言え、すぐに目的地であるリリムちゃんの叔父が居るだろう屋敷に向かうことはできません。
なぜなら、水浴びもままならない状態で数日という時間を過ごしたリリムちゃんの今の姿は、地位のある人間の前に出られる姿とはとても言えなかったからです。
彼らのような立場のある人間は、汚れた人間というものを嫌います。
それに、貴族を含めた偉い人たちは色々なことをしていて忙しく、着いてすぐに面会を望んで叶うものではないのです。
リリムちゃんもそんな立場に居た人間の一人なので、そのことは十二分に理解していました。そしてそこまで考えてから、リリムちゃんは溜め息を吐きました。
溜め息を吐くリリムちゃんに気付いて、サイキョウさんは視線を向けてから口を開きます。
サイキョウさんの問いかけに、リリムちゃんは一瞬だけサイキョウさんに視線を向けた後で地面の方に落とし、溜め息を追加しつつ応えます。
不満げに口を尖らせながらそう言うリリムちゃんを見て、サイキョウさんは納得したように、ああなるほど、と頷いてから言葉を続けます。
ものの見事に図星を指されたリリムちゃんは、苦虫を噛み潰したように表情を歪めながら唸ることしかできません。
ぷんすかという擬音がまさに相応しい様子で肩を怒らせるリリムちゃんを横目で見ながら、サイキョウさんは小さい笑みを浮かべて言います。
リリムちゃんのその問いかけに、サイキョウさんは少し驚いたように目を見開いた後でリリムちゃんの方を見ました。
視線を受けたリリムちゃんは、サイキョウさんの意図がわからず首を傾げることしかできません。
サイキョウさんの発言は、ある意味でリリムちゃんの尊厳に関わる部分を否定するような内容でもあります。
王族とは社会的な地位で言えば最高位の人間です。それが例え、外国という権力の及ばぬ場所であろうとも――いやむしろ今の世の中であれば、及ばぬ場所であるからこそ、優先されるべき対象でしょう。
礼を尽くされて当たり前。力を貸されて当たり前。
リリムちゃんはそんな存在であり、サイキョウさんが先ほど指摘した不満は持っていて当然のものなのです。
図星を指されて感情を乱さない人間がほぼ居ないのと同じように、自身にとっての当然を下らないと評されて冷静で居られる人間も殆ど居ないでしょう。そこに大人も子ども関係がありません。
サイキョウさんはそう考えながら、胸中で溜め息を吐いた後で言葉を続けます。
サイキョウさんの言葉に、リリムちゃんは納得したように頷きます。
サイキョウさんはそんなリリムちゃんの様子を見てから、ははと笑って言います。
リリムちゃんの要望を聞いて、サイキョウさんは少し考えるような間を置いた後で言います。
サイキョウさんの提案に、リリムちゃんはそう言い放つと走り出しました。
サイキョウさんはそう考えた後で、先を行くリリムちゃんの背中に向かって言います。
その言葉に、リリムちゃんは足を止めてサイキョウさんの方に向き直ると、笑って言いました。
サイキョウさんはリリムちゃんの言葉に降参だと言うように両手をあげます。
リリムちゃんはそれを見て、してやったりと笑みを深めるのでした。