サイキョウさんとリリムちゃん、最後の騒動を終わらせる 4

文字数 672文字

 立派な庭園に、刺客のがなり立てるような声が響きます。
 今まさに命のやり取りをやってるってのに、お前らよくそんなアホな会話が出来るな!? 頭いかれてるんじゃねえか!?
 刺客の言葉は状況を考えれば至極真っ当な主張だったでしょう。

 ただ、その主張が命を奪おうとする側から出てきている時点で、雌雄は決していると言えました。

 なぜなら、

 ……そう思うんだったら手を出してくればいいだけの話でしょうが。

 本当に命のやり取りをしている最中だったら、会話をする暇なんてある訳ないじゃない。

 リリムちゃんの言葉が示すように――刺客の側に、サイキョウさんを越えてリリムちゃんの命に届きうる手が本当にあるのならば、声をあげる必要などないからです。
 確かに、戦闘を有利に進めるためには、手を止めて相手の様子を観察する必要が出てくる場面もあるでしょう。
 しかしそれは、刺客である彼がアホな会話と思わず評するほど無防備に会話をしている標的に対して、手を出さずに口を挟む理由にはなりえません。
 つまり、現状においてあなたは私を殺せない。そうでしょう?
 ~~っ!
 リリムちゃんの言葉は、正にその通りだったのでしょう。

 刺客は、声をあげることもできず、悔しそうな表情で歯噛みしました。









 …………。
 そして、サイキョウさんは突然始まった二人のやり取りをとりあえず黙って見ていたのですが、
 ……まぁ確かに間違ってないけど。

 それを守られる側のちいひめちゃんが言っちゃうのはどうなのよ。

 リリムちゃんの言葉を肯定しつつも、呆れたような、感心したような声音でそんな言葉を呟くのでした。
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登場人物紹介

サイキョウさん。主人公。

得意なこと:体を使うこと全般
苦手なこと:異性や子どもとのコミュニケーション

一般的な常識を理解した上で、暴力という解決方法を採ることが多かったりする人。悪人でも善人でもない、俺ルールの行使者。

リリムちゃん。小さい姫さん。略してちいひめちゃん。
得意なこと:虚勢を張ること
苦手なこと:体を使うこと

トラブルメーカーそのいち。
遊興すれば襲われる、街を歩けば攫われるといいことなし。
サイキョウさんの理不尽な扱いにもそろそろ慣れてきた。

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