リリムちゃん、さっそくトラブルに巻き込まれる 3

文字数 1,035文字

 そして、リリムちゃんが目覚めたときには。
 見覚えの無い場所で、両手を腰の後ろで縛られていました。
 …………。
 周囲の不快な臭いや、その臭いから想像できる不潔な場所に転がすように放置されている自分の扱いなど。
 リリムちゃんにとって考えることは多く、尽きることはありません。
 しかし、リリムちゃんの口からいの一番に出てきた言葉は自分の身を心配する言葉でもなければ、これからどうなるかという不安を吐露する言葉でもありませんでした。
 これはあの人に見つかったらすんごい笑われる展開じゃない……!
 もしくはすんごい呆れられた上で嫌味を言われるやつ。さいてー!
 うるさいぞ! 何を騒いでるのか知らないが、静かにしてろ!
 その叫びはあまりにも大きく。
 見張りと思われる誰かがリリムちゃんの居る部屋の扉を開いて現れると、リリムちゃんに向かってそう言いましたが、
 ああん!? 
 言われなくてもこれ以上騒がないわよ黙ってるわよだから引っ込んでなさいよ。
 ……あ、ああ。わかればいいんだ、わかれば。
 リリムちゃんの捕まっている側とはとても思えない威圧感と低い声音に、思わず怖気づいた挙句にそう言って、リリムちゃんの言葉どおりに引っ込みました。
 扉が閉まるのを見届けてから、リリムちゃんは溜息を吐いた後で横たわったままの体をなんとか起こして床の上に座ります。
(……さて、どうしたものかしら)
 少し叫んで気持ちが落ち着いたリリムちゃんは、冷静になった頭で状況を整理します。
(身体に違和感がないから乱暴はされていない。
 ……これは本当に嬉しい限りね)
 まずは自身の状態を確かめて、女性にとっての最低な行為はされていないことがわかって安堵の吐息を吐くリリムちゃん。
 そのまま思考を続けます。
( 誘拐された、のでしょうけど。目的は売買の方かな。だって、私がどこの誰かを彼らは知らないはずだもの。
 状況は単純だけど……私に解決できるかと言うと難しい)
 ……流石にあの人も私に何かあったことには気づいてる、わよね?
(実際に売られるまでには時間があるだろうけど……)
 そこまで考えてから、リリムちゃんは小さく自嘲の笑みを浮かべた後で、
 ……結局彼に頼るしかないんだからどうしようもないわね、私は。
 たぶん、最悪の状況になる前に間に合ってくれると思うし。
 そうなってもらわないとすごい困るんだけど。
 ――絶対に嫌味言われるんだろうなぁ、ああやだなぁ……。
 そう呟いてから、大きな溜息を吐きながら項垂れました。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

サイキョウさん。主人公。

得意なこと:体を使うこと全般
苦手なこと:異性や子どもとのコミュニケーション

一般的な常識を理解した上で、暴力という解決方法を採ることが多かったりする人。悪人でも善人でもない、俺ルールの行使者。

リリムちゃん。小さい姫さん。略してちいひめちゃん。
得意なこと:虚勢を張ること
苦手なこと:体を使うこと

トラブルメーカーそのいち。
遊興すれば襲われる、街を歩けば攫われるといいことなし。
サイキョウさんの理不尽な扱いにもそろそろ慣れてきた。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色