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文字数 539文字

「信じるよ。トキちゃんが、その、おばあちゃんだってこと」
 ホテルまで美佐子を送っていったとき、ぽつりとプリン頭は呟いた。先ほどまでの強固な姿勢とうってかわった台詞。それでも俺は驚かなかった。「そうか」と一言だけ返すと、美佐子はトキの手を握った。
「ごめんね。何もしてやれなくて」 
 フロントで少女の手を握り、涙をこぼす美佐子を、ホテルの宿泊客は不思議そうに眺める。当のトキも、なぜ美佐子が自分の手を取って泣いているのかを理解していない。困り顔のトキを見て、俺は美佐子に泣くのをやめるように諭した。
「あのさ、美佐子。できれば新潟のみんなや完二伯父さんに、ばあちゃんのことうまくごまかして欲しいんだけど。完二伯父さんには……悪いけど、特に」
「うん、わかってる」
「あ、ミサコ」
 トキが涙を拭う美佐子に声をかけると、すぐに顔をあげて「なに?」と笑顔を作る。トキも美佐子の目を見て笑うと、ぎゅっと美佐子を抱きしめて言った。
「今日はすごく楽しかった! また遊ぼうね!」
 俺は美佐子の話を思い出した。八十九のばあちゃんが、美佐子をおぶって帰ったこと。トキが今日観覧車で呟いた言葉は、美佐子の中にきっと残る。おんぶはできなくても、ぎゅっと抱きしめることはできるトキを、美佐子も抱きしめ返していた。
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