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文字数 691文字

 すぐに旭に連絡を取ると、二人で家の周りを捜索した。公園、コンビニ、駅。どこを探しても十歳の少女の姿はない。時間はすでに七時を回っている。いくら夏でまだ明るいと言っても、子供が出歩いていたら危ない。かといって、警察に捜索を手伝ってもらうわけにもいかない。少女の正体は、新潟で捜索願が出されている一○三歳の老人だ。その正体がばれなくても、俺とトキとの関係を説明する勇気がなかった。
「いたか?」
「西口の方にはいなかった。だけどお前、本当何やってるんだよ。大事なばあちゃんだろ?」
 旭が俺を責めるが、俺は何も答えることはできなかった。ただ不安で仕方なかった。それでトキに当たった。一番当たってはいけない人間に、怒りをすべてぶつけてしまったのだ。
「旭、もういい。あとは俺ひとりで探す」
「おい、本当にいいのか? 見つかるまで付き合うぜ?」
 旭は本当にいいやつだ。でも彼にこれ以上付き合わせるわけにはいかない。今回のことは俺が原因だし、そもそも旭は巻き込まれた赤の他人。俺は旭の人のよさに付け込んで、振り回しすぎた。
「いいよ。悪かったな、遅くまで。明日は試験だし、帰って勉強しろよ。あとは俺が探す。俺が見つけなけりゃいけないんだ」
 何か言いたげな旭だったが、俺の強い目に免じて、黙って従ってくれた。「見つかったら連絡くれよ」と言うと、旭は背中を向けた。
 さて、これからどうするか。うちの周辺で遊んだ場所は大体探した。電車に乗るということはないだろう。何しろトキにはお金を渡していない。となると、もしかしたら灯台下暗し。アパートの近くにいるのではないだろうか。俺は一度自分の部屋に戻ることにした。
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