第20話
文字数 1,131文字
春花は理路高校に片道40分かけて自転車で通学している。だから仁も一緒に自転車で通学していた。
「毎朝大変だから中間地点で待ち合わせにしない?」
春花は毎朝迎えに来る仁に申し訳なさそうに言いながら自転車にまたがった。
「俺が迎えに来たいんだ。迷惑?」
仁は春花を窺うような、返答に怯えるような表情をした。それが仁の演技であることを知らない春花は妙な罪悪感にかられてしまい「いや、迷惑ではなくて……悪いと思ったから……」としどろもどろになる。
高校生活が始まって1週間が経ち、新しい生活にもそれなりに馴染みだしていた。毎日登下校を仲良く一緒にする仁と春花のことをほとんどの生徒たちが付き合っていると思い込んでいる。全て仁の思惑通りであり、このまま春花に男を寄せ付けずに高校生活をやり過ごすつもりだった。しかしこの日、事件は起きた。
金髪で、ピアスを耳と鼻に付けた男子生徒が登校してきた。校則がゆるい高校がよくて理路高校に入学した彼の名は武藤天使 という言わずもがなキラキラネームである。
天使は1年間の受験勉強期間中ほぼ不眠不休で勉強し続けたことで受験終了とともに風邪をこじらせて入院していたのだ。ようやく体調も良くなり登校してきた彼はDKとなった新たな生活に浮き足立っていた。
「キミたち、いいじゃん、そのバッヂ!」
廊下を歩くオタク男子2人の背後から2人の間に割って入り、両腕を2人の肩に回した天使は彼らの通学カバンに大量に付いたマイナーな歴史の人物や分子構造やゲームキャラのバッヂを褒めた。
「この学校は自由だ!満喫しようぜ!」
そう言い残すと2人の肩をポンと叩いて自身の教室へと軽い足取りで向かっていった。オタクたちは唖然としていた。
教室に足を踏み入れた天使は目が合った生徒全員に声をかけた。
「よ!オハヨ!」「今日もいい天気だね!」「その髪型かわいいよ!」
声をかけまくりながら1番後ろの席まで通過してハッとした。
「え!?俺の席どこ!?」
電話で担任に4組だと聞いてはいたが、席は聞いてなかった。
生徒たちが呆然とする中、春花は昨日のホームルームで担任が武藤天使が今日から学校に来ると言っていたことを思い出して話しかけた。
「わたしの隣だよ」
真顔で席を指さす春花を見た瞬間、天使はハートを射貫かれた。
「めっちゃかわいい……」そうつぶやくと、春花の隣の席に座るなり「ありがとう!俺、天使っていうんだ!キミは?」と身を乗り出した。
「春花」
「めっちゃいい名前!!春花って呼んでいい?俺は天使でいいよ!」
春花は目を輝かせながら楽しそうにマシンガントークをする天使を見ながら【元気だな。この距離感の無さは極度のプラス思考で逆にいいことなのかな】などと淡々と分析していた。
「毎朝大変だから中間地点で待ち合わせにしない?」
春花は毎朝迎えに来る仁に申し訳なさそうに言いながら自転車にまたがった。
「俺が迎えに来たいんだ。迷惑?」
仁は春花を窺うような、返答に怯えるような表情をした。それが仁の演技であることを知らない春花は妙な罪悪感にかられてしまい「いや、迷惑ではなくて……悪いと思ったから……」としどろもどろになる。
高校生活が始まって1週間が経ち、新しい生活にもそれなりに馴染みだしていた。毎日登下校を仲良く一緒にする仁と春花のことをほとんどの生徒たちが付き合っていると思い込んでいる。全て仁の思惑通りであり、このまま春花に男を寄せ付けずに高校生活をやり過ごすつもりだった。しかしこの日、事件は起きた。
金髪で、ピアスを耳と鼻に付けた男子生徒が登校してきた。校則がゆるい高校がよくて理路高校に入学した彼の名は武藤
天使は1年間の受験勉強期間中ほぼ不眠不休で勉強し続けたことで受験終了とともに風邪をこじらせて入院していたのだ。ようやく体調も良くなり登校してきた彼はDKとなった新たな生活に浮き足立っていた。
「キミたち、いいじゃん、そのバッヂ!」
廊下を歩くオタク男子2人の背後から2人の間に割って入り、両腕を2人の肩に回した天使は彼らの通学カバンに大量に付いたマイナーな歴史の人物や分子構造やゲームキャラのバッヂを褒めた。
「この学校は自由だ!満喫しようぜ!」
そう言い残すと2人の肩をポンと叩いて自身の教室へと軽い足取りで向かっていった。オタクたちは唖然としていた。
教室に足を踏み入れた天使は目が合った生徒全員に声をかけた。
「よ!オハヨ!」「今日もいい天気だね!」「その髪型かわいいよ!」
声をかけまくりながら1番後ろの席まで通過してハッとした。
「え!?俺の席どこ!?」
電話で担任に4組だと聞いてはいたが、席は聞いてなかった。
生徒たちが呆然とする中、春花は昨日のホームルームで担任が武藤天使が今日から学校に来ると言っていたことを思い出して話しかけた。
「わたしの隣だよ」
真顔で席を指さす春花を見た瞬間、天使はハートを射貫かれた。
「めっちゃかわいい……」そうつぶやくと、春花の隣の席に座るなり「ありがとう!俺、天使っていうんだ!キミは?」と身を乗り出した。
「春花」
「めっちゃいい名前!!春花って呼んでいい?俺は天使でいいよ!」
春花は目を輝かせながら楽しそうにマシンガントークをする天使を見ながら【元気だな。この距離感の無さは極度のプラス思考で逆にいいことなのかな】などと淡々と分析していた。