第43話
文字数 1,509文字
墓参りから数日後、桜が散り終わったというのに未だに友達が出来ずにいる義翔はサークルに入ろうかと考えていた。
【はるかって呼ばれてたな、あの子。どっかのサークルに入ったのかな】
気付けば春花のことばかり考えている。しかし大学内で春花を見かけることはなく、向いの大学なのかも知れないとも思いながらも、常に春花が居ないか探しながら歩いていた。
一方、義翔と同じ今一歩大学に通っている愛羅、環奈、詩歌は野良犬サークルを立ち上げていたがメンバーが集まらずにいた。
「つぅかなんで野良犬なん?野良猫でよくね?」
「いや、猫より犬だろ。あたし犬派だし」
「つか、そもそも野良犬っていなくね?」
そのとき大学の中庭を犬だか猫だか分からない動物が歩いていた。愛羅が「あ!」と大声を出し、興奮しながら指をさした。
「野良犬いた!!」
「いや、あれは猫だろ」
「いーや、犬だね!」
愛羅は犬だか猫だか分からない動物を追いかけ始めた。それにビックリした詩歌と環奈が「マジ?」「ヒールで走るの嫌なんだけど!」などと叫びながら愛羅の後を追った。
犬だか猫だか分からない動物は鬼の形相で迫り来る3人に驚き、逃げ始めた。
「待て――!!犬――!!!」
「いや、猫だって!!」
中庭を猛ダッシュで走りゆく犬だか猫だか分からない動物は曲がり角から急に出て来た義翔を避けきれずに激突した。足元にタックルをくらった義翔は派手に転んだ上に飲んでいたコーラが鼻に入りむせた。
「なにが起きたんだ……」
コーラまみれのコンクリートに這いつくばったままの義翔は息を荒げながら犬だか猫だか分からない動物に視線を向けた。動物は気を失っていた。
「うわっ!猪!!」
驚いた義翔は起き上がると尻餅をついた格好で後ずさりをした。
そこに愛羅と詩歌と環奈が走ってきた。
「犬死んでる!!」
「マジ!?」
「猫だって!!」
騒ぐ愛羅たちと尻餅をついたままの義翔は目を合わせた。
愛羅は眉を寄せながら問いかけた。
「だれ?」
詩歌が義翔を指さしながら笑った。
「やべぇ、コーラかぶってる!」
環奈が義翔を凝視した。
「どっかで見たことある……」
義翔の脳裏には入学式の日、清楚な格好で罵詈罵倒した女性と綺麗な顔で義翔に「ダッサ」と軽蔑の眼差しを向けた女性の姿が過ぎった。
環奈が「あ!」と義翔を指さしながら大声を出した。
「コイツ入学式の日駅で愛羅にぶつかったヤツじゃん!!」
愛羅は目を丸くさせた。
「え?こんなんだったけ?もっとモッサくなかった?」
義翔はあれから街にある庶民の服屋で無難な服を買いそろえた。おかげでそれなりにお洒落な大学生になっていた。改めて愛羅たちを見た義翔は思った。よく見れば化粧は濃いし何より口が悪い。
【全然清楚じゃねぇじゃん。つぅかこいつらも同じ大学だったのかよ】
嫌なことを思い出してしまった義翔は早くこの場を立ち去ろうと立ち上がると、ほぼ空になったペットボトルを拾い、愛羅に「あのときはぶつかって悪かった」と言い残して彼女らに背をむけた。
愛羅はハッとした。
「ねぇ、あんた暇だよね?友達と一緒にあたし等のサークル入ってよ」
義翔は『サークル』という言葉に耳をピクリとさせたが、彼女たちとつるむつもりはなく、背を向けたまま首だけ振り返って答えた。
「友達なんていねぇよ。じゃぁな」
義翔はコーラでカピカピになった格好でその場を去った。
呆然と立ち尽くす愛羅たちの横を大学の教授が通りかかった。教授は気絶している犬だか猫だか分からない動物を凝視した。
「おや、こんなところにタヌキが」
そう言うと何食わぬ顔で犬だか猫だか分からない動物の首の皮を掴み「役所に連絡しなくては」と持ち去っていった。
【はるかって呼ばれてたな、あの子。どっかのサークルに入ったのかな】
気付けば春花のことばかり考えている。しかし大学内で春花を見かけることはなく、向いの大学なのかも知れないとも思いながらも、常に春花が居ないか探しながら歩いていた。
一方、義翔と同じ今一歩大学に通っている愛羅、環奈、詩歌は野良犬サークルを立ち上げていたがメンバーが集まらずにいた。
「つぅかなんで野良犬なん?野良猫でよくね?」
「いや、猫より犬だろ。あたし犬派だし」
「つか、そもそも野良犬っていなくね?」
そのとき大学の中庭を犬だか猫だか分からない動物が歩いていた。愛羅が「あ!」と大声を出し、興奮しながら指をさした。
「野良犬いた!!」
「いや、あれは猫だろ」
「いーや、犬だね!」
愛羅は犬だか猫だか分からない動物を追いかけ始めた。それにビックリした詩歌と環奈が「マジ?」「ヒールで走るの嫌なんだけど!」などと叫びながら愛羅の後を追った。
犬だか猫だか分からない動物は鬼の形相で迫り来る3人に驚き、逃げ始めた。
「待て――!!犬――!!!」
「いや、猫だって!!」
中庭を猛ダッシュで走りゆく犬だか猫だか分からない動物は曲がり角から急に出て来た義翔を避けきれずに激突した。足元にタックルをくらった義翔は派手に転んだ上に飲んでいたコーラが鼻に入りむせた。
「なにが起きたんだ……」
コーラまみれのコンクリートに這いつくばったままの義翔は息を荒げながら犬だか猫だか分からない動物に視線を向けた。動物は気を失っていた。
「うわっ!猪!!」
驚いた義翔は起き上がると尻餅をついた格好で後ずさりをした。
そこに愛羅と詩歌と環奈が走ってきた。
「犬死んでる!!」
「マジ!?」
「猫だって!!」
騒ぐ愛羅たちと尻餅をついたままの義翔は目を合わせた。
愛羅は眉を寄せながら問いかけた。
「だれ?」
詩歌が義翔を指さしながら笑った。
「やべぇ、コーラかぶってる!」
環奈が義翔を凝視した。
「どっかで見たことある……」
義翔の脳裏には入学式の日、清楚な格好で罵詈罵倒した女性と綺麗な顔で義翔に「ダッサ」と軽蔑の眼差しを向けた女性の姿が過ぎった。
環奈が「あ!」と義翔を指さしながら大声を出した。
「コイツ入学式の日駅で愛羅にぶつかったヤツじゃん!!」
愛羅は目を丸くさせた。
「え?こんなんだったけ?もっとモッサくなかった?」
義翔はあれから街にある庶民の服屋で無難な服を買いそろえた。おかげでそれなりにお洒落な大学生になっていた。改めて愛羅たちを見た義翔は思った。よく見れば化粧は濃いし何より口が悪い。
【全然清楚じゃねぇじゃん。つぅかこいつらも同じ大学だったのかよ】
嫌なことを思い出してしまった義翔は早くこの場を立ち去ろうと立ち上がると、ほぼ空になったペットボトルを拾い、愛羅に「あのときはぶつかって悪かった」と言い残して彼女らに背をむけた。
愛羅はハッとした。
「ねぇ、あんた暇だよね?友達と一緒にあたし等のサークル入ってよ」
義翔は『サークル』という言葉に耳をピクリとさせたが、彼女たちとつるむつもりはなく、背を向けたまま首だけ振り返って答えた。
「友達なんていねぇよ。じゃぁな」
義翔はコーラでカピカピになった格好でその場を去った。
呆然と立ち尽くす愛羅たちの横を大学の教授が通りかかった。教授は気絶している犬だか猫だか分からない動物を凝視した。
「おや、こんなところにタヌキが」
そう言うと何食わぬ顔で犬だか猫だか分からない動物の首の皮を掴み「役所に連絡しなくては」と持ち去っていった。