第52話

文字数 644文字

 数日後、今一歩大学の近くで車を停め、義翔の帰りを待ちながら仔猫の育成ゲームをしていた銀次は相馬からの着信が鳴り響くスマホを急いで取った。
「おおぅ。相馬、待ってたぞ」
「ああ、何人かに聞いたが8年前の8月20日に埼玉での川の事故は皆無で、東宮家の長男、東宮仁朱が事故死したという事実はどこにもなかったぞ」
 銀次は相馬が言っている意味が分からず、何を言っているのか考えた後「は?」と聞き返していた。
「いやいや、墓に仁朱って名前掘ってあるし、実際もう居ねーし……」ここまで話してハッとした。
「……そういや葬式してねぇわ。遺体が醜くなって見るのが辛いかなんかの理由で警察から直葬したとかなんとかだったから普通に納得してたがまさか嘘だったなんてな……でもまたなんでそんな嘘ついたんだ?」
「さぁな。だが東宮仁朱が消えたなら事件の可能性がある。洗う必要が出てきた」

 電話を切った銀次は呆然としながら8年前の記憶を呼び起こしていた。
【俺は東宮家の兄弟2人の面倒をみるように言われていたが、仁朱のほうは幼い頃から手がかからなかったから主に義翔の面倒をみていた。長男だし仁朱のほうが東宮グループの後継者として期待されてた雰囲気だったように記憶しているが何があった?】

 そのとき義翔からLEINが入りポップに視線を落とした。
『義翔 歩いて帰る』
【ホの字の嬢ちゃんと合流成功したのか】
 銀次は車のエンジンをかけ、ギアをドライブに入れた。
【どの道死んでる可能性のが高い。全てが分かるまでお坊ちゃんには黙っておこう】
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