第7話
文字数 1,520文字
7
ファルヴォスが右手を突いた。すると指先からうねうねと何かが現れた。
(小型悪竜 !)看破したユウリに、人間の前腕ほどの全長の悪竜 が迫る。その数は六。
「青 」ユウリは早口で詠唱。全身をカバーする大きさの水盾を発生させた。雷槌を脇に挟み、両手持ちした水盾を身体の前に掲げる。
小型悪竜 が高速で迫る。刹那、ユウリは雷槌を起動。雷を水盾の裏側へと飛ばす。
水盾が帯電した。衝突した小型悪竜 も雷を帯びて硬直する。
ユウリはすかさず「水盾波 !」叫ぶと水盾が脈動。その表面に貼りついた小型悪竜 を身体の内側から破壊する。
四体が地に落ちていった。だが残り二体は負傷こそすれ死んではいない。水盾から距離を取り、口腔を黒炎で満たし始める。火球を放つ前兆だった。
「ユウリ君をいじめる者にはお仕置きです!」真剣そのものな高い声がするや否や、ジャキン! 金属音とほぼ同時、何かが高速で横切った。数瞬の後、二体の小型悪竜 に斜めに線が入った。すぐにすうっとずれ落ちて、身体が完全に二分される。
「お見事、カノン」ユウリは笑顔を浮かべた。視界の先にはカノンがいた。身の丈ほどの長さの刀を腰の辺りで両手持ちしている。色は、黄色と黒のまだら模様。カノンの有するキビタキの神鳥聖装 の賜物であり、カノン自身は「黒黄刀」と呼んでいた。
「失礼な。わたしはいつでも見事な生き様ですよ。でもユウリ君と結ばれればもっと見事に──」
「はいはい。後でじっくり聞いてやるから、今はあいつをどうにかしよう」
カノンの戯言にユウリは言葉を被せ、ファルヴォスに視線を移した。
「もうこいつら程度は何体いようが俺の敵じゃあない! 横着してないで大将自らかかってきたらどうだよ!」
ユウリが挑発すると、「顕レヨ、竜輪」ファルヴォスは呟いた。すると垂らした両手の先から、黒色のリングが二十個近く生まれた。炎を纏っているのか、ちろちろと表面が揺らめいている。
斜め下から両手を振るう。すると竜輪が射出された。
その内一つが飛来するが、ユウリは構わず前方に加速。頭を軽く下げて回避し、ファルヴォスとの距離を詰める。
雷槌で殴りかかった。しかしゴウッ! またしても黒炎の壁が出現。打撃は直前で防がれる。
「顕レヨ、竜旋棍 」冷たい声がして、ファルヴォスの両手前腕に沿う形で黒色の棒が現れた。途中から分岐した取っ手を握り込んでいる。
(何だよ、この武器は)戸惑うユウリに構わず、ファルヴォスは小さく右手を引いた。
その瞬間、ユウリの視界に無数の白色球体が入ってきた。次々とファルヴォスの右腕に吸い込まれていく。
ファルヴォスが一瞬硬直した。腕に纏う籠手も、奇襲により多少は損傷した様子だった。
ユウリは大きく羽ばたいて離脱。充分に離れてから、攻撃の出所に目をやった。
フィアナだった。凜々しい顔でファルヴォスを凝視し続けている。
「ありがとうフィアナ! 助かったよ!」ユウリが感謝を口にすると、フィアナは小さく頷いた。
フィアナの近くの女子生徒が紫の翼をはためかせた。するとその表面から同色の泡が発生。ファルヴォスに襲いかかるがやはり炎壁に防がれる。
「奴は視認さえできれば、炎の壁でどんな攻撃でも防御できるみたいだ! だから全員で色んな方向から攻め立てて、シャウアの準備が終わるまでに一発でも多く有効打を与えていこう!」
ユウリが声を張り上げると、仲間の生徒たちの何人から返事が来た。
ファルヴォスが右手を突いた。すると指先からうねうねと何かが現れた。
(小型
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小型
水盾が帯電した。衝突した小型
ユウリはすかさず「
四体が地に落ちていった。だが残り二体は負傷こそすれ死んではいない。水盾から距離を取り、口腔を黒炎で満たし始める。火球を放つ前兆だった。
「ユウリ君をいじめる者にはお仕置きです!」真剣そのものな高い声がするや否や、ジャキン! 金属音とほぼ同時、何かが高速で横切った。数瞬の後、二体の小型
「お見事、カノン」ユウリは笑顔を浮かべた。視界の先にはカノンがいた。身の丈ほどの長さの刀を腰の辺りで両手持ちしている。色は、黄色と黒のまだら模様。カノンの有するキビタキの
「失礼な。わたしはいつでも見事な生き様ですよ。でもユウリ君と結ばれればもっと見事に──」
「はいはい。後でじっくり聞いてやるから、今はあいつをどうにかしよう」
カノンの戯言にユウリは言葉を被せ、ファルヴォスに視線を移した。
「もうこいつら程度は何体いようが俺の敵じゃあない! 横着してないで大将自らかかってきたらどうだよ!」
ユウリが挑発すると、「顕レヨ、竜輪」ファルヴォスは呟いた。すると垂らした両手の先から、黒色のリングが二十個近く生まれた。炎を纏っているのか、ちろちろと表面が揺らめいている。
斜め下から両手を振るう。すると竜輪が射出された。
その内一つが飛来するが、ユウリは構わず前方に加速。頭を軽く下げて回避し、ファルヴォスとの距離を詰める。
雷槌で殴りかかった。しかしゴウッ! またしても黒炎の壁が出現。打撃は直前で防がれる。
「顕レヨ、
(何だよ、この武器は)戸惑うユウリに構わず、ファルヴォスは小さく右手を引いた。
その瞬間、ユウリの視界に無数の白色球体が入ってきた。次々とファルヴォスの右腕に吸い込まれていく。
ファルヴォスが一瞬硬直した。腕に纏う籠手も、奇襲により多少は損傷した様子だった。
ユウリは大きく羽ばたいて離脱。充分に離れてから、攻撃の出所に目をやった。
フィアナだった。凜々しい顔でファルヴォスを凝視し続けている。
「ありがとうフィアナ! 助かったよ!」ユウリが感謝を口にすると、フィアナは小さく頷いた。
フィアナの近くの女子生徒が紫の翼をはためかせた。するとその表面から同色の泡が発生。ファルヴォスに襲いかかるがやはり炎壁に防がれる。
「奴は視認さえできれば、炎の壁でどんな攻撃でも防御できるみたいだ! だから全員で色んな方向から攻め立てて、シャウアの準備が終わるまでに一発でも多く有効打を与えていこう!」
ユウリが声を張り上げると、仲間の生徒たちの何人から返事が来た。