第42話 緊急出動 西暦2025年 July 7
文字数 2,285文字
アメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィア
Philadelphia, Pennsylvania, United States
カーレル・B・サンダー邸 Carrel B. Sander House
剣術指南アルバート・ミラーとの模擬 試合を終えたレオナルドは、カーレルと共に屋敷の第二食堂へと場所を移し、早い夕食を摂っていた。
「レオナルド。カレンも呼ばぬのか?」
カーレルは屋敷で過ごした二週間の生活で、レオナルドの気持ちが変化していることを期待してそう尋ねたのだ。
「少し様子を見ましょう。果 たして現代の世界に魔王セラヌが存在しているのか? それを見極 めてから考える事にします」
レオナルドはそう答えた。
「カレンはどうしている?」
「変わらずに過ごしています。大丈夫。カレンの近況は確認しています。スマートフォンで連絡はとっていますから。最もカレンは僕の不在については、家族揃 っての、豪華客船世界一周の旅に出掛けているのだと思っていますが」
「そうか。カレンに変わりはないか。ああ、君の家族も大丈夫だ。ヘリコプターも搭載 した最新設備の客船にて旅行中なのだ。極秘で財団の警備も付けている。実は内緒 の話だが、あの客船には戦闘用ヘリまで搭載しているのだ」
「戦闘用ヘリ。そんな物まで積んでいるのですか!? それは海賊が現れても安心です」
「ああ。海賊船など、客船に近づく前にすべてロックオンされるさ!」
カーレルはそう言って笑った。
「君のお父上が、我が財団傘下 の企業人であって良かった」
「日頃の功績 の報奨 。CEO特別賞で豪華客船世界一周の旅をいただいたのだと、急な旅立ちにもかかわらず両親は大喜びで出かけて行きましたから。僕は当分、安心して行動する事が出来ます」
「敵が気付く前に、カレンの家族も何処か安全な所に移しておきたいのだよ。カレンの父君 には財団の顧問弁護士をお願いしている最中 だ。母君は財団が広告主を務めるテレビ番組に出演する料理家なのだよ。何とでも理由は作れるのだが…」
カーレルはレオナルドに縋 るように話し続ける。
「うーん。出来る事なら、カレンを戦いには巻き込みたくはないのです。僕らで片付く事であればそれで」
やはりレオナルドの気持ちは変わってはいない。
「カレンの自宅やその身辺には、それと気付かれぬよう極秘に警護を続けている。急な事変の際には無理矢理にでもヘリに押し込むが。レオナルド。早く君の考えに変化が訪れることを期待しているよ」
「ありがとうございます」
レオナルドは、自分とカレンの家族に最大限の配慮を示すカーレルに礼を述べる。
「カーレル様。カーレル様」
次席執事のトムが、大きな声を上げながら食堂へと駆け込んで来た。
「何だトム。騒々しい」
カーレルは襟 に差したナプキンを外しながら応える。
「旦那様。ジェームス様の監禁 場所と周囲の状況が、詳しくわかりました」
「そうか!」
「はい」
「勿論、無事であろうな?」
「はい。ジェームス様は生きておられます」
「場所は何処か?」
「ニューヨーク・マンハッタン市、五番街。ジェームス様はマンハッタンに建つセントラルスターホテルの地下室に監禁されているようです。地下室には五名の生命反応があります。これはジェームス様も含めての反応です」
「よし、即座に突入の準備を進めろとプロジェクトチームに連絡をするのだ」
「はい」
次席執事のトムは特殊なイヤホン型の無線機を操作し、ジェームズモートン救出の為に急遽 設置されたプロジェクトチームとの交信を始めた。
「いや、待て。儂が直々に指揮を執 る」
カーレルはそう言うと、トムの耳から無線機を奪い取る。
「チームサンダー。カ-レルだ!」
イヤホン型の無線機を耳に嵌 め込み、カーレルはジェームズモートン救出部隊との会話を始めた。
「チームサンダー。よいか、FBI長官には話をつけておく。そちらにもFBIの係員が向う事であろう。我等の正当性はその場でFBIが確認してくれる筈だ。その上で存分とやるのだ。ジェームスを監禁している敵は、人間じゃない可能性が高い。今から儂もそこに向う。総ての戦闘準備が完了しても、まだ待てるようなら儂の到着を待て。儂は今から45分でそこに到着する。チームサンダー。よいな!?」
隣で会話を聴いていた次席執事のトムが悲鳴を上げる。
「旦那様御止め下さい。銃撃戦になります。危険この上ない。旦那様が赴 くなど冗談にも程があります」
「何を言う!? 危険など、もとより覚悟の上じゃ。それよりトム。至急 格納庫 に連絡をしておけ。ジェット戦闘機の出撃 準備をさせるのだ。グレート・クイーンの緊急出動だ!!」
「カーレル様…」
不安な気持ちに満たされたトムが、情 けない声を上げる。
「トム。お前も運命により選ばれたサンダー家の次席執事だ。しっかりと腹を括 れ。どうやら、既に戦いは始まったようだ。今後は何時何時 、敵の奇襲 に遭 うやもしれぬ。トム。この屋敷はお前が守り抜くのだ。良いな!!」
「何時何時!?」
カーレルの迫力 に押され、思わずこくりと頷 いた次席執事のトムはおろおろと振り返り、戦闘機出撃準備の指示を出しに財団本部へと戻って行った。
「レオナルド。共に行くだろう?」
カーレルが食事を終えたレオナルドに尋ねる。
「ええ、勿論です。魔王セラヌに会えますでしょうか?」
レオナルドは、えくぼを見せ答えた。
「ふうむ解らぬ。只、もし奴がそこに居れば今夜は小手調 べ程度で退散しよう。ジェームスは必ず助け出すが、深追いは禁物 じゃ。よいな、レオナルド」
カーレルの申し出に、レオナルドは黙って首を縦に振って応えた。
Philadelphia, Pennsylvania, United States
カーレル・B・サンダー邸 Carrel B. Sander House
剣術指南アルバート・ミラーとの
「レオナルド。カレンも呼ばぬのか?」
カーレルは屋敷で過ごした二週間の生活で、レオナルドの気持ちが変化していることを期待してそう尋ねたのだ。
「少し様子を見ましょう。
レオナルドはそう答えた。
「カレンはどうしている?」
「変わらずに過ごしています。大丈夫。カレンの近況は確認しています。スマートフォンで連絡はとっていますから。最もカレンは僕の不在については、家族
「そうか。カレンに変わりはないか。ああ、君の家族も大丈夫だ。ヘリコプターも
「戦闘用ヘリ。そんな物まで積んでいるのですか!? それは海賊が現れても安心です」
「ああ。海賊船など、客船に近づく前にすべてロックオンされるさ!」
カーレルはそう言って笑った。
「君のお父上が、我が財団
「日頃の
「敵が気付く前に、カレンの家族も何処か安全な所に移しておきたいのだよ。カレンの
カーレルはレオナルドに
「うーん。出来る事なら、カレンを戦いには巻き込みたくはないのです。僕らで片付く事であればそれで」
やはりレオナルドの気持ちは変わってはいない。
「カレンの自宅やその身辺には、それと気付かれぬよう極秘に警護を続けている。急な事変の際には無理矢理にでもヘリに押し込むが。レオナルド。早く君の考えに変化が訪れることを期待しているよ」
「ありがとうございます」
レオナルドは、自分とカレンの家族に最大限の配慮を示すカーレルに礼を述べる。
「カーレル様。カーレル様」
次席執事のトムが、大きな声を上げながら食堂へと駆け込んで来た。
「何だトム。騒々しい」
カーレルは
「旦那様。ジェームス様の
「そうか!」
「はい」
「勿論、無事であろうな?」
「はい。ジェームス様は生きておられます」
「場所は何処か?」
「ニューヨーク・マンハッタン市、五番街。ジェームス様はマンハッタンに建つセントラルスターホテルの地下室に監禁されているようです。地下室には五名の生命反応があります。これはジェームス様も含めての反応です」
「よし、即座に突入の準備を進めろとプロジェクトチームに連絡をするのだ」
「はい」
次席執事のトムは特殊なイヤホン型の無線機を操作し、ジェームズモートン救出の為に
「いや、待て。儂が直々に指揮を
カーレルはそう言うと、トムの耳から無線機を奪い取る。
「チームサンダー。カ-レルだ!」
イヤホン型の無線機を耳に
「チームサンダー。よいか、FBI長官には話をつけておく。そちらにもFBIの係員が向う事であろう。我等の正当性はその場でFBIが確認してくれる筈だ。その上で存分とやるのだ。ジェームスを監禁している敵は、人間じゃない可能性が高い。今から儂もそこに向う。総ての戦闘準備が完了しても、まだ待てるようなら儂の到着を待て。儂は今から45分でそこに到着する。チームサンダー。よいな!?」
隣で会話を聴いていた次席執事のトムが悲鳴を上げる。
「旦那様御止め下さい。銃撃戦になります。危険この上ない。旦那様が
「何を言う!? 危険など、もとより覚悟の上じゃ。それよりトム。
「カーレル様…」
不安な気持ちに満たされたトムが、
「トム。お前も運命により選ばれたサンダー家の次席執事だ。しっかりと腹を
「何時何時!?」
カーレルの
「レオナルド。共に行くだろう?」
カーレルが食事を終えたレオナルドに尋ねる。
「ええ、勿論です。魔王セラヌに会えますでしょうか?」
レオナルドは、えくぼを見せ答えた。
「ふうむ解らぬ。只、もし奴がそこに居れば今夜は
カーレルの申し出に、レオナルドは黙って首を縦に振って応えた。